- 著者
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畑良明
亀谷 禎子
横内 厚雄
豊岡 広起
荊木 祐司
松田 浩一
- 出版者
- 北海道医療大学
- 雑誌
- 東日本歯誌 (ISSN:09109722)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.33-44, 1998
- 被引用文献数
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歯科保存修復学基礎実習における学生に対する評価は,指導教員によって完成された製作物あるいは口頭試問などで総合的に判定されていた。しかし,これらの方法は,学生にとってあくまでも受動的な評価であり,理論的な理解度と,技術的な熟達度を理解させるには困難な方法である。学生は,基礎実習を履修する前に,あらかじめ講義によって予備的知識が与えられ,さらに実習開始時における指導教員による課題に対するデモンストレーション,修復材料に対する再講義,実習中における教員のアドバイス,形成された模範模型などから多くの知識と情報を得ている。しかし,これらの知識や情報を学生がいかに理解しているかを把握することは困難である。これらの欠点を補う方法として,学生自身が完成製作物を評価する方法がある。これによって,教員側が理想とする目標にどの程度到達しているかを認識させることが可能になるといわれ,学生に技術的到達度を再認識した上で,フィードバックをして技術訓練を行うことができれば,より早く技術の習得がなされるといわれている。そこで,著者らは学生自身が行った窩洞形成に対する理論的な理解度と技術的な習熟度を明確に認識させ,歯科保存修復学基礎実習における教育向上を計る一助として,93年度より窩洞の自己評価法を導入し,窩洞の自己評価法に対する有用性について報告をしてきたが,初年度は,単に前期,後期実習終了時において上顎右側第1大臼歯MOII級インレー窩洞について自己評価を,94年度は前期実習におけるすべての課題に対して自己評価をさせたが,その評価の実施については学生自身の自主性に委ねた。さらに,95年度においては,窩洞評価の実施を学生自身に委ねることなく,半ば強制的に実施させたが,その評価に対して指導教員とのディスカッションを行う時間を設けることができなかった。そして,96年度からは課題終了時にその日の課題と自己評価に対して指導教員とディスカッションを行う時間を設け,さらに後期実習における天然歯による実習に際しても項目別評価を行わせたが,個々の学生の実習課題に対する進行度の違いが生じてきたため教員とのディスカッションを行う時間が設定できなかった。以上のように,その年度における基礎実習の反省点を踏まえ,徐々ではあるが,毎年基礎実習方法を変革してきた。今風基礎実習における教育効果をさらに挙げるために96年度までの4年間にわたる推移を調査し,2,3の知見を得たのでここに報告する。