著者
豊泉 俊大
出版者
日本生態心理学会
雑誌
生態心理学研究 (ISSN:13490443)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.26-29, 2018-09-08 (Released:2020-12-01)
参考文献数
12

画像的再現をめぐるギブソンとグッドマンの論争について考えたい.論争をあつかったこれまでの論考は,ギブソンの主張をグッドマンの理論の枠組みにおいて再構成するか,論争のきっかけとなった遠近法の慣習性という特殊の話題にのみ言及するかのどちらかであった.この小論では,ギブソンとグッドマンの主張の相違を明確にし,論争が両者の立論の根本に係わっていること,論争の核心が古来の実在論,唯名論の対立へと通ずることを指摘したい.
著者
豊泉 俊大(大阪大学大学院)
出版者
日本生態心理学会
雑誌
生態心理学研究 (ISSN:13490443)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.3-14, 2021-05-01 (Released:2021-06-10)
参考文献数
22

本稿の目的は,ギブソンによる画像理論の全容を解き明かすことである.ギブソンは画像経験の本性を,その二重性にみる.画像経験が二重性を伴うことは事実である.われわれは画像をまえにして,たしかに,画面と画面に描写されているものとを見る.しかし,私の見るところ,そうした二重性によって画像経験の内実が尽くされることはない.画像経験の本性は二重性にではなく,むしろ三重性にあると,本稿は論ずる.そして,そのことが,ギブソンが示した画像の定義そのものから導きだされうることを,したがって,本稿の提示する見解が,ギブソンによる画像理論の正統な解釈たりうることを,精緻なテクスト読解によって証明する.本稿は,これまでには十分に検討されることのなかった,ギブソンによる画像理論の真意を精確に見定めるものとなる.