著者
賞雅 寛而 石丸 隆 元田 慎一 波津久 達也 古谷 正裕
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本基盤研究では、船舶及び海洋構造物を対象とした防食、特にSUS304ステンレス材料のすきま腐食の防止に必要な放射線誘起表面活性(RISA)のメカニズムの解明、すきま腐食に対する適切な皮膜の基礎開発及び、人工海水中のRISAの効果の確認を行い、以下の結果を得た。1)試験片に小型密封放射線源^<60>Coを密着させ、その裏面から照射されるγ線を利用した実験により、ステンレス鋼の不動態皮膜をより強固にすることで局部腐食の発生を抑制し、RISA防食法が放射線照射施設外においても応用できることがわかった。2)放射化試験片自らが発するγ線を利用した実験により、中・強放射化試験片では安定した不動態皮膜を保ち、厳しい腐食環境下でも耐食性が維持できることがわかった。3)腐食電位の卑化は密封放射線源の有無に対応しており、微弱放射線環境においてもRISA効果によりすきま腐食の抑制効果が得られる。4)SUS304鋼の腐食電位をカソード防食電位まで卑化させずとも、不動態皮膜を保持し、すきま腐食を防止することを確認した。5)放射化試験片自らが発する放射線を利用した実験により、66μGy/h以上の照射積算線量で安定した不動態皮膜を保ち、厳しい腐食環境下でも耐食性が維持できることを確認した。6)試験片の照射積算線量を変化させた場合、その積算線量の増加により防食効果が増大することを確認した。これまで防食亜鉛や防食塗料などの鉄鋼構造物腐食防止法の多くはいずれも海外先進国によって開発されており、船舶・海洋構造物の腐食制御技術は国外技術に依存しているが、この新しい船舶・海洋構造物の腐食制御方法は、エネルギー環境技術として、我が国の技術水準を向上させ世界に貢献する重要な手段になると期待される。