- 著者
-
赤木 真弓
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.3, pp.114-124, 2018 (Released:2020-09-20)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
4
本研究では,大学生の女子を対象とし,母娘関係と娘のアイデンティティ形成,精神的健康との関連について検討した。母親と娘の関係性を多角的に検証するための尺度を作成し,その下位尺度を用いてクラスタ分析を行った結果,「反発群」「親密群」「自立群」「葛藤従属群」に類型化された。得られた類型について,分離と結合,および精神的健康の視点で分析した結果,「自立群」が健康な分離タイプ,「反発群」が不健康な分離タイプ,「親密群」が健康な結合タイプ,「葛藤従属群」が不健康な結合タイプとなった。さらに,アイデンティティ達成が高かったのは「親密群」と「自立群」で,どちらも母親からの押し付け,母親への劣等感が低かった。逆に,アイデンティティ達成が低かったのは「反発群」と「葛藤従属群」で,どちらも母親からの押し付け,母親への劣等感が高かった。以上のことから,娘のアイデンティティ形成および精神的健康にとって重要なのは,母親との分離か結合か,ということではなく,母親からの押し付けや母親への劣等感を感じない母娘関係であることがあきらかになった。