著者
笹川 滿廣 赤松 学
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.26-30, 1978-11-30

近年, 京都市及び安城市で, ハウス栽培植物(ユリとキュウリ)の根部を食害するハエ幼虫による被害が問題になっている。両地で採集された標本を調査したところ, 本害虫はクロバネキノコバエ科の新種であったので, チビクロバネキノコバエBradysia agrestis Sasakawaと命名し, ここに記載したほか, 2・3の生態的知見を述べる。成虫の寿命は雄で約6日間, 雌は産卵後間もなく死亡するので約4日である。雄は翅を振動させながら雌に接近し, 生殖器の交接後は互に逆方向を向いて数分間交尾する。雌は通常25卵くらいの卵塊を腐植物の裏側に2∿3塊に分けて産みつける。親雌は個体によって雌雄いずれかの単性を産み, その比は1 : 1である。幼虫はトウモロコシ寒天培地での人工飼育が可能であるが, 種々のそ菜の葉や根も摂食することを確かめた。幼虫は4令を経過して蛹化する。理論的発育零点は卵で5.8℃, 幼虫では9.0℃, 蛹では8.7℃であり, 卵から蛹期までの発育有効積算温度は193.1日度である。