- 著者
-
越前屋 勝
- 出版者
- 日本生物学的精神医学会
- 雑誌
- 日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.3, pp.159-164, 2011 (Released:2017-02-16)
- 参考文献数
- 30
うつ病に対する断眠療法は,一晩の断眠直後から効果が発現する,有効率が約60 %と高い,副作用が少ない,薬物抵抗性の難治性うつ病にも有効である,といった利点がある。一方で,効果が持続しにくい,患者側・治療者側の負担が大きい,診療報酬請求ができない,といった欠点があり,今日まで我が国では普及してこなかった。しかし,断眠療法の効果を増強・持続させる方法について多くの研究報告が蓄積されてきた。断眠療法単独ではなく,抗うつ薬,炭酸リチウム等の薬物治療,高照度光療法あるいは睡眠位相前進等を併用することで,断眠療法の効果を増強・持続させ得ることが知られている。うつ病の治療においては一般的な薬物治療のみでは難渋・遷延するケースも少なからずあるため,断眠療法を治療選択肢の1つとして組み入れることは難治例の解決や治療期間の短縮につながると期待できる。