- 著者
-
越田 全彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
- 雑誌
- 日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.3, pp.273-280, 2014 (Released:2014-09-26)
- 参考文献数
- 31
同種造血幹細胞移植にも関わらず死亡した急性白血病の若年女性の自験例を機に, 筆者は以下の3つの問いを立てた. ①科学技術を駆使すれば機械と同様に肉体を修理できるという考え方はどこから来たのか?②病気や人間を包括的に捉えるための人間観にはどのようなものがあるのか?③より包括的な人間観に立った時, 「なぜ私が病気になったのか」との患者の問いに臨床医はどのように対応できるのか?肉体を機械とみなす生物医学モデルはデカルト以来の心身二元論と還元主義に由来する. 生物医学モデルを超克したものとしてEngelの生物心理社会モデルが存在するが, より包括的な人間観として, 魂の次元を含む霊心身三元論が存在する. 人間が取り結ぶ関係性として, 「自己と他者」, 「自己と世界」, 「自己と自己自身」, 「自己と超越者」の4つがあり, 三角錐を用いて図示できる. 病の真因はこれらの関係性の歪みと捉えられる. 三元論-三角錐モデルと名付けられた新たな包括的医学モデルは, スピリチュアルケアや補完代替医療を含めたあらゆる専門分野・介入手法の特徴と守備範囲を明示し, それらの専門家をも交えた未来のチーム医療の形を提示するとともに, 「なぜ私が」という患者の苦悩を軽減させるための指針を臨床医に与える可能性がある.