著者
土方 康世 山崎 武俊 二宮 文乃
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.7-14, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
18

目的:電磁波過敏症合併化学物質過敏症が疑われた患者に有効漢方処方の検討。方法:症状を中医学的に血瘀,陽虚,脾虚と弁証し,中国で半身不随に処方されてきた補気・活血・通絡作用のある補陽還五湯と補陽作用のある肉桂・炮附子を加えた補陽還五湯加肉桂,附子を投与。残存する下痢などの脾虚症状に,補脾作用のある黄耆建中湯を追加投与した。結果:長期にわたる頭痛,脱力発作,不眠などの QOL 低下が速やかに改善した。考察:補陽還五湯加肉桂,炮附子で補気・活血・通絡・補陽して先瀉し,黄蓍建中湯で後補して,化学物質過敏症および電磁波過敏症による諸症状改善に対し,有効である可能性が示唆された。
著者
今中 政支 峯 尚志 山崎 武俊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.611-616, 2009 (Released:2010-03-03)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

スギ花粉症の薬物療法の治療成績を向上させるために即効性を期待できる漢方薬を西洋薬に併用し臨床効果を検討した。アレルギー性鼻炎に対する漢方薬として第一選択とされている小青竜湯例(20名)の有効率は45%と芳しくない成績であった。一方,越婢加朮湯例(24名)では有効率64%と良好な成績であった。重症例に処方される麻黄湯,越婢加朮湯併用(大青竜湯の簡便方)例(7名)は有効率72%であった。麻黄と石膏の消炎作用の増強目的に小青竜湯と五虎湯を併用した症例(16名)では有効率87%とさらに良好な結果であった。経口ステロイド薬の使用を余儀なくされた症例は皆無であった。副作用は胃もたれを訴えた1名のみであった。11種類の漢方薬を使用した全体の治療成績は有効率83%と極めて良好な結果であった。漢方薬を併用することにより,薬物療法の臨床効果の向上を図ることができた。
著者
山崎 武俊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.504-510, 2016 (Released:2017-05-15)
参考文献数
6

動悸を主訴に外来を受診する患者は多く, それらの中で病的な動悸として心臓の調律異常 (不整脈) を表現している場合があり, その適切な診断および治療は患者の心事故を防ぐために極めて重要である. しかし, 胸苦しさや息切れを含めて動悸として訴えることも多く, 西洋医学的に病的意義を持たないことも多い. 一方, 漢方医学は疾患の有無にかかわらず, 患者の体質 (虚実) に合わせて治療することができる. 動悸を主訴として外来を受診した50名を対象に, 西洋医学的検査を中心とした初期診断を行う. 西洋医学的疾患の治療が必要とされたときはそれを優先する (西洋薬単独, W群 : 7名). 西洋医学的疾患が明らかでないときは患者と相談し, 漢方薬単独 (K群 : 25名), 漢方・西洋薬併用 (KW群 : 18名) による治療を行い, その症状改善効果を検討した. 治療の有効性としては, 西洋薬単独群 (有効率 : 100%), 漢方薬単独群 (有効率 : 96%), 漢方・西洋薬併用群 (有効率 : 100%) のいずれの群においても高い有効率を示した. 動悸/不整脈に対して, 西洋医学および漢方医学的治療を併用することで, 予後および症状の改善に大きな効果が期待できる.
著者
越田 全彦 山崎 武俊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.134-139, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2

症例は特記すべき既往のない19歳男子大学生。16歳の時に明らかな誘因なく1日に10回以上嘔吐を繰り返し,経口摂取不能のため近医入院の上,点滴加療を受けた。発作間欠期にはほぼ無症状だが,以後年に2~3回,激しい嘔吐のために1週間程度入院するようになった。その都度精査を受けたが,脱水を認めるのみで他に明らかな異常を認めなかった。19歳を過ぎた頃より毎月入院するようになったため,精査目的に当院紹介受診となった。西洋医学的には特記すべき異常を認めず,周期性嘔吐症候群と診断した。漢方医学的には,気鬱・気逆と診断した。半夏厚朴湯を処方したところ,自覚症状は著明に改善し,内服開始から半年が経過したが嘔吐発作は出現していない。 気鬱・気逆を伴う強い嘔吐症状を半夏厚朴湯が予防する可能性があり,機能性消化管障害に対する漢方薬の有効性が示唆された。
著者
山崎 武俊 峯 尚志 土方 康世
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.287-292, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 5

冠攣縮性狭心症は冠動脈が一時的に収縮するためにおこる狭心症であり,薬物治療が有効である。ただし治療に難渋する症例も多い。今回,我々は冠攣縮性狭心症に対して四逆散と桂枝茯苓丸を併用し,症状の消失を認めた2症例を経験したので報告する。症例1:73歳,男性。安静労作に関係のない胸部不快感を自覚。ホルター心電図で症状に一致するST 上昇を認めた。抗狭心症薬を処方されたが症状が消失せず。四逆散と桂枝茯苓丸を投与したところ,症状が完全に消失した。症例2:58歳男性。安静時の胸部不快感を自覚。アセチルコリン負荷試験陽性となり上記診断を得られた。抗狭心症薬を処方されたが,胸部不快感が消失せず。四逆散と桂枝茯苓丸を処方。症状が完全に消失した。治療抵抗性の冠攣縮性狭心症に対して,四逆散と桂枝茯苓丸の併用が有効である可能性が示唆された。