著者
山口 優子 (越野 優子)
出版者
国文学研究資料館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

源氏物語の最終部分である宇治十帖(橋姫~夢浮橋巻)において、室町期に流通した伝本である高松宮家本と国冬本の顕著な類似が、一年度目で確認できたので、二年度目の今年は、この事実を如何に視覚化し・分析するかに最重点のポイントを置いた。ただし宇治十帖は膨大な量であり、この分析には規制の方法では多くの時間と手間がかかる。そこでここに、統計学的手法(多変量解析等)を用いることとし、出来るだけ多くの巻について対照・分析を行う。文字列の一致の段階は先例があるので、そこに新しい係数を加え、国冬本全体の考察の最終的な完成を導き、同時に文学と統計学的解析に進歩をもたらした。また一年度目の昨年末、"源氏物語とは一つ(青表紙本系統、とりわけ大島本)ではないことを国内外に明確に知らせたい為、独特の物語世界をもつ5巻に絞って翻刻・注釈・現代訳・(外国語訳)考察等を付し試作版を韓国で口頭発表し、論文を韓国で二〇〇九年五月末刊行した。更に七月には台湾(台湾日本語文学会)で、上記に述べた統計的手法について口頭発表し、これを同八月に刊行した。