著者
趙 棟梁 鳥羽 良明
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

Phillipsの風波の平衡領域の概念と観測データを用いて,HasselmannのモデルとPhillipsのモデルからエネルギー散逸率を計算すると,二つのモデルの形は異なるにもかかわらず実質上一致することが分かった。どちらも空気の摩擦速度u_*の3乗に比例し,波齢に弱く依存することが分かる。白波面積率Wも砕波過程を表すので,エネルギー散逸率と同様と考えられ,従来のWの経験公式の多くはu_*^3に比例する形をとっている。今回,風波の情報を含む過去の種々の観測データを最小二乗法を用いて再検討した。Wは,波齢や波周期より,風速や風の摩擦速度との相関が高い。さらに,u_*^2と風波のピーク角周波数を含む無次元の「砕波パラメータ」R_Bを導入すると,データのばらつきが著しく下がることが分かった。ちなみにR_Bは,u_*^3と波齢の積で表される。現在のエネルギー散逸モデルは,上記の砕波の特性を表現すべく修正される必要がある。