著者
足立 圭司
出版者
別府大学短期大学部紀要編集委員会
雑誌
別府大学短期大学部紀要 (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.30, pp.55-64, 2011-02

大分県内の各知的障害者施設に,利用者の高齢化と老化についてアンケート調査を行った.その結果,多くの高齢知的障害者は知的障害者更生施設へ集中していることが明らかになった.知的障害者施設の介護力不足の問題と介護老人福祉施設へ容易に入所できない実態が示された.施設からは高齢知的障害者のケアと一般の認知症高齢者や身体介護を要する高齢者のケアは,基本的に異なるといった声が多く見られた.また新体系への移行に伴い高齢者生活支援プラス知的障害者固有のニーズに基づくサービスの提供,あるいは介護保険での認知症対応型共同生活介護等を高齢知的障害者に利用しやすい形態にして地域ケアの方向へシステム化するという二方向の意見に整理された.今後,高齢知的障害者固有のニーズについて,認知症対応ケアとの相違も含めて調査研究を続けていく必要がある.
著者
足立 圭司
出版者
別府大学短期大学部
雑誌
別府大学短期大学部紀要 (ISSN:02864991)
巻号頁・発行日
no.36, pp.77-84, 2017-02

1997年介護保険法が制定され施行以降16年をへた。介護保険は高齢者介護の社会化を目指し社会保険方式をとり、民間介護サービスの導入を図りながら現在に至っている。制度が始まってサービス量の確保の問題や介護報酬の不正請求への対処の時期をへて増大する介護保険給付に対応すべく介護サービス量の抑制と介護給付対象者の絞り込みが始まっている。また介護保険への地域包括ケアシステムの導入により要介護者の地域生活のありようを変えようとする市町村による「総合事業」が開始されている。そして、財源論によるバイアスから地域包括ケアシステムを担う役割が公助・共助から自助・互助とへ動き出している。これらは、社会保障の分野が経済分野の一つと捉えられ「コスト削減」すべき領域として認識されている事から来る介護保険の持つ本質的問題である。今後、介護保険サービスに大きな影響を持つ地域包括ケアシステムのゆくえに注目する必要がある。