- 著者
-
溝井 泰彦
福永 龍繁
足立 順子
藤原 敏
上野 易弘
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1987
1.人に於けるエタノールの初回通過効果の有無を調べる為、被験者をアルデヒド脱水素酵素(ALDH)アイソザイムの欠損者と正常者に分け、空腹時に体重当り0.1g及び0.4gのエタノールを経口及び経静脈投与した。0.4g/kgを投与した場合、血中エタノール濃度は直線的に減少した。血中アセトアルデヒド濃度は欠損者でのみ上昇した。経口投与した時の血中エタノール濃度は経静脈投与の場合よりもかなり低く、血中エタノール濃度曲線下面積は経静脈投与に比べ正常者に於いて13%、欠損者に於いて22%減少した。0.1g/kgを経口投与した場合、血中エタノール濃度は曲線的に下降した。曲線下面積は経静脈投与に比べ経口投与した時は正常者に於いて35%、欠損者に於いて33%減少し、エタノールの初回通過効果の存在が示された。曲線下面積の減少の割合は少量投与の場合に大きく、初回通過効果はエタノール少量投与によって明瞭に認められるものであった。2.食事後に0.1g/kgのエタノールを経口投与すると、ALDH正常型・欠損型被験者共に血中エタノール療度は空腹時に比べて有意に低くなり、曲線下面積は空腹時の経口投与に比べ著しく減少した。欠損者の血中アセトアルデヒド濃度は食事後投与の場合に高くなった。エタノール吸収の遅れ・吸収効率の低下と共に肝血流の増加とそれに伴うエタノール代謝の亢進が考えられた。3.健常者12人に0.1g/kgのエタノールを経静脈投与し、血中エタノール濃度曲線をMichaelis-Menten型酵素反応を消失過程に持つone compartment open modelで解析した。エタノール濃度の最高値は2.8mMから9.4mM迄分散し、非線形最小二乗法で求めたKm値、Vmax値には大きな個人差があった。エタノールが体内に拡散する速度と拡散スペースの容積もエタノール代謝の重要な要因であることが判った。