著者
福永 龍繁
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
pp.45-47, 2012

異状死の発生は,冬季に多く,春から夏季にかけては少なくなる.例年の冬季の増加は,高齢者の入浴中やトイレ内での死亡が多くを占め,寒冷環境の影響が大きい.しかしながら,2007(平成 19)年 8 月及び 2010(平成 22)年 7 月に検案数の異常な増加があった.この原因は,梅雨明け後の小雨,かつ記録的な猛暑の影響から熱中症による死亡の急増であると判断されたので,監察医務院から関係省庁及び報道関係に対して「熱中症の予防」を訴える警鐘を鳴らした.本稿では,監察医務院で取り扱った熱中症の実態を紹介すると共に,熱中症死の死体現象,その診断の実態について解説し,併せて寒冷環境の死亡に与える影響についても紹介する.<br>
著者
福永 龍繁
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.Suppl., pp.45-47, 2012 (Released:2012-03-27)
参考文献数
3

異状死の発生は,冬季に多く,春から夏季にかけては少なくなる.例年の冬季の増加は,高齢者の入浴中やトイレ内での死亡が多くを占め,寒冷環境の影響が大きい.しかしながら,2007(平成 19)年 8 月及び 2010(平成 22)年 7 月に検案数の異常な増加があった.この原因は,梅雨明け後の小雨,かつ記録的な猛暑の影響から熱中症による死亡の急増であると判断されたので,監察医務院から関係省庁及び報道関係に対して「熱中症の予防」を訴える警鐘を鳴らした.本稿では,監察医務院で取り扱った熱中症の実態を紹介すると共に,熱中症死の死体現象,その診断の実態について解説し,併せて寒冷環境の死亡に与える影響についても紹介する.
著者
高津 光洋 福永 龍繁 中園 一郎 吉岡 尚文 西 克治 前田 均 三澤 章吾
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

わが国では,乳幼児の突然死に対し安易に乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断され,特に剖検せず,あるいは剖検所見を無視したSIDS診断も多い.このような状況から脱却するために,本研究班は文科省科研費の補助のもとに,平成11年3月「SIDS診断の法医病理学的原則に関する提言」を報告した.今回の目的はこの提言による乳幼児死亡例の死因診断を検証し,提言内容を再検討することにある.前回各大学から収集した乳幼児突然死剖検例307例中122例がSIDS群と診断されていたが,提言に従ってretrospectiveに再検討した結果,SIDSと診断せざるを得なかったのは14例であった.これは全対象例307例の5%,SIDS群の11.5%にすぎなかった.提言前後の乳幼児死亡の推移を厚労省人口動態統計で検討したところ,SIDSはほぼ半減していた.乳児死亡自体が減少しているものの,安易なSIDS診断に対して提言が警鐘となったと思われる.次に乳幼児剖検例における死因診断において,客観的根拠となり得る診断指標について,剖検所見のみならず中毒学的,病態生理・生化学的,微生物学的検査を含め検討し,窒息死と肺感染症の死因診断根拠を提示した.更に,臓器重量,溢血点の有無等の剖検所見について死因別に検討し,死因診断と死亡過程の病態分析のための客観的指標として病理形態的所見の定量分析が有用であることを示唆した.更に,実際の裁判例において提言内容を積極的に鑑定や意見書等で主張してきた.又,乳幼児急死例における虐待,揺さぶり症候群,ライ症候群など死因判定の難しい疾患についても注意を喚起した.わが国では乳幼児死亡例の剖検例が少なく,本研究年度を越えて提言の更なる検証と死因診断の客観的根拠に関する研究の必要性を認識している.
著者
林 紀乃 原田 一樹 福永 龍繁
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.628-636, 2017

<p>東京都監察医務院(東監医)は、東京23区内の異状死を検案し、死因がわからない場合は行政解剖を施行する。過去20年間(1995年から2015年)、東監医で異状死として取り扱われたてんかん関連の死亡について、その状況と死因に関して調査、検討した。死因に関与する疾患として、てんかんがあったものは364例(全検案数の0.15%)で、201例(55.2%)は行政解剖を施行されていた。直接死因は、いわゆるSUDEPに相当するようなてんかん発作に起因した急死が最も多く191例(52.5%)と全体の半数以上を占めた。男性135人、女性56人と男性が女性の2.5倍であり、半数以上が就寝中に急死していた。2番目には溺死が多く、106例(男性52例、女性54例)で、男女差は殆どなかった。特にてんかん症例では通常の浴槽内死亡に比して、上半身が浴槽内、足が浴槽外で沈んでいる姿が多いことがわかった。</p><p>(本稿は第50回日本てんかん学会学術集会、企画セッション11 SUDEPを探るの講演内容を元に作成した)</p>
著者
溝井 泰彦 福永 龍繁 足立 順子 藤原 敏 上野 易弘
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.人に於けるエタノールの初回通過効果の有無を調べる為、被験者をアルデヒド脱水素酵素(ALDH)アイソザイムの欠損者と正常者に分け、空腹時に体重当り0.1g及び0.4gのエタノールを経口及び経静脈投与した。0.4g/kgを投与した場合、血中エタノール濃度は直線的に減少した。血中アセトアルデヒド濃度は欠損者でのみ上昇した。経口投与した時の血中エタノール濃度は経静脈投与の場合よりもかなり低く、血中エタノール濃度曲線下面積は経静脈投与に比べ正常者に於いて13%、欠損者に於いて22%減少した。0.1g/kgを経口投与した場合、血中エタノール濃度は曲線的に下降した。曲線下面積は経静脈投与に比べ経口投与した時は正常者に於いて35%、欠損者に於いて33%減少し、エタノールの初回通過効果の存在が示された。曲線下面積の減少の割合は少量投与の場合に大きく、初回通過効果はエタノール少量投与によって明瞭に認められるものであった。2.食事後に0.1g/kgのエタノールを経口投与すると、ALDH正常型・欠損型被験者共に血中エタノール療度は空腹時に比べて有意に低くなり、曲線下面積は空腹時の経口投与に比べ著しく減少した。欠損者の血中アセトアルデヒド濃度は食事後投与の場合に高くなった。エタノール吸収の遅れ・吸収効率の低下と共に肝血流の増加とそれに伴うエタノール代謝の亢進が考えられた。3.健常者12人に0.1g/kgのエタノールを経静脈投与し、血中エタノール濃度曲線をMichaelis-Menten型酵素反応を消失過程に持つone compartment open modelで解析した。エタノール濃度の最高値は2.8mMから9.4mM迄分散し、非線形最小二乗法で求めたKm値、Vmax値には大きな個人差があった。エタノールが体内に拡散する速度と拡散スペースの容積もエタノール代謝の重要な要因であることが判った。