著者
森 聖二郎 稲松 孝思 林 泰史 軽部 俊二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.457-462, 1986-09-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10

高熱, 白血球増多, 血沈亢進など重症感染症を疑わせる臨床経過をたどった偽痛風の6症例を報告する.症例は74~89歳, 全例女性で, 38.3~39.8℃の発熱を伴い, 末梢血白血球数10,100~17,900/μl, CRP6+, 血沈1時間値65~164mm/hrであった. これらの所見から, 重症感染症が疑われ各種抗生剤の投与をうけたが, いずれも無効であった。関節液中ピロリン酸カルシウム結晶の存在, 特徴的な関節軟骨石灰化などより偽痛風と診断, 非ステロイド抗炎症剤が投与され, すみやかな解熱, 炎症所見の著明な改善をみた. 6例中4例では, 2関節以上に関節炎の所見を認めた. また, 経過から感染症の存在は否定され, 全身性の炎症所見は全て偽痛風発作に由来したものと結論された.偽痛風は一般に, 単関節炎症状を呈し, 時に微熱, 軽度の白血球増多を認める程度であるとされているが, このように全身性炎症反応を伴い, 重症感染症とまぎらわしい例もあり, 老年者発熱疾患の鑑別診断上重要である.