著者
辰己砂 昌弘 松田 厚範 忠永 清治 南 努
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、メカニカルミリング(MM)法により得られる非晶質微粒子を熱処理することにより、高イオン伝導性結晶を析出させた新しいタイプの固体電解質ガラスセラミックス材料を創製することを目的としている。2年間で得られた主な成果は以下の通りである。(1)MMによるLi_2S-P_2S_5系、Li_2S-P_2S_5-SiS_2系およびLi_2S-P_2S_5-GeS_2系非晶質固体電解質材料の合成を試みた。その結果、何れの系でも広い組成域でガラスが得られた。これらのガラスは室温において10^<-4>Scm<-1>程度の高い導電率を示した。(2)上記(1)で作製したガラスを様々な条件で熱処理することにより、室温での導電率が10^<-3>Scm^<-1>付近の極めて高い導電率を有するガラスセラミックスが得られた。(3)上記(2)で得られたガラスセラミックス中には、現在室温で最も高い導電率を示すLi_<4-x>Ge_<1-x>PxS_4系チオリシコン結晶と類似の結晶がいずれも生成しており、これが高い導電率の得られる要因であることを見出した。(4)Li_2S、単体リン、単体イオウを出発原料として、Li_2S-P_2S_5系ガラスおよびガラスセラミックスの合成をMM法により試みたところ、熱的・電気的性質においてLi_2SとP_2S_5から作製したものとほぼ同等の生成物が得られた。(5)MM法によって得られたLi_2S-P_2S_5系ガラスセラミックスを固体電解質とし、負極にIn金属、正極にLiCoO_2を用いて全固体二次電池を試作し特性を評価した。その結果、初期数サイクルの不可逆容量が大きいものの、初期充電を容量規制で行うことによって放電容量が増大し、200サイクル経過後も放電容量約100mAhg^<-1>、充放電効率ほぼ100%の極めてサイクル特性に優れた全固体電池が得られた。