著者
辰野 誠次
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.585, pp.628-635, 1935 (Released:2007-05-24)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

1. 予ハうろこごけ目19種ノ Heterochromosomen ニ就テ觀察ヲ行ツタ。此等ノ中 Madotheca 屬ノ4種ハ1個ヅツノ Heteroechromosom Hノミヲ有スルガ, 他ノ15種ハ何レモ2個ヅツノ Heterochromosomen H, hヲ合セ有ス。2. 苔類ノ Heterochromosomen ハ屡ゝ性染色體トシテ分化シテヰル。此等性染色體ハ二系統ニ大別サレ, H-染色體カラ分化シタモノトh-染色體カラ分化シタモノトガアル。而シテH,hハ互ニ起源ヲ異ニスルモノデアルカラ, 從ツテ苔類ノ性染色體ハ二種ノ起源ヲ有スルコトガ明デアル。3. Calobryum rotundifolium ハH, hヲ合セ有スルガ, 兩者ノ中Hノミガ分化シテ雌雄ノ間ニ性染色體トナツテヰル。
著者
辰野 誠次 岡田 博
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.984, pp.202-210, 1970
被引用文献数
7

1) 本研究ではオシダ科5属7種の核学的研究が行なわれた. その体細胞における染色体数は次のごとくである.<i>Matteuccia orientalis</i> イヌガンソク 2n=80<br><i>Athyrium niponicum</i> イヌワラビ 2n=80<br><i>Woodsia polystichoides</i> イワデンダ 2n=82<br><i>Diplazim esculentum</i> クワレシダ 2n=82<br><i>D. wichurae</i> ノコギリシダ 2n=82<br><i>D.dilatatum</i> ヒロバノコギリシダ 2n=82, 123<br><i>Diplaziopsis cavaleriana</i> イワヤシダ<br>2n=164<br>このうちイワヤシダの染色体数は初めて明らかにされたものである. また, ヒロバノコギリシダでは2n=82, 123 の染色体数をもつ個体が発見され, 本種には種内倍数性があることがわかった.<br>2) ヘラシダ属の2種 (クワレシダ, ノコギリシダ), クサソテツ属の1種 (イヌガンソク) では核型がA-Fの6型から成り, そのうちA-E型は各2組ずつに再分され計11組から成るので, 原始基本数は b=11 と考えられる. この b=11 は b=12 から由来したことが核型分析から推定された.<br>3) 核型分析された3種は b=11 の8倍性起原の植物と考えられる. そのうち, ヘラシダ属の2種(2n=82) は異質染色体 (H)を6本, クサソテツ属のイヌガンソク (2n=80) は8本欠くことによって現在の染色体数になったものであろう.