著者
辻 博之
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.147-154, 2010-01

農業技術は古来より進歩を続け、さまざまな生産上の問題を克服してきた。畑作農業にあって古くから問題となってきたのは、地力の維持と増進の問題、病害虫や雑草害による収量の不安定、連作障害などである。緑肥作物はそれぞれの時代に直面した問題に対応するために輪作に導入されてきた。もっとも、緑肥作物などの輪作は問題の最終的な克服手段とはならず、他の技術(化学肥料、農薬、抵抗性品種等)の開発と普及までのつなぎや、それらとの組合せに使う技術といって良い。しかし、時代は移り変わっても、緑肥作物には常に新しい役割が与えられてきた。現在、緑肥作物に求められている役割は、現在の技術で克服しがたい生産上の諸問題や、最新技術が引き起こす副作用、地域が抱える社会的な状況に起因する諸問題の解決にあるといえる。本稿では、畑作やその周辺で使われる緑肥作物の利用の現状を概説するとともに、その問題点と展望を述べようと思う。