著者
川村 尚 海老原 昌弘 辻 康之
出版者
岐阜大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

金属原子間結合電子系と配位子π電子系の間の共役を利用して、酸化還元電位の制御されたクラスター錯体を創製し、これを機能性材料としての応用する可能性を探ることを目的として本研究を進めた.1.ロジウム複核錯体カチオンラジカル塩の合成と物性解析.[Rh_2(mhp)_4](mhp=2-oxo-6-methylpyridinato)と[Rh_2(mmap)_4](mmap=2-methylamino-6-methylpyridinato)のCVは化学的に可逆な1電子酸化波をそれぞれ0.48,-0.49V vsFc^+/Fcに示した.この結果は,金属原子間結合と配位子間のσ-π共役が化学的意味をもつことを示している.カチオンラジカルの塩[Rh_2(mhp)_4]SbCl_6・o-C_6H_4Cl_2の結晶において隣接ラジカル分子のピリジン環が互いに重なりあった3次元的相互作用系が形成されていた.一方,[Rh_2(mmap)_4]SbF_6・2o-C_6H_4Cl_2の結晶構造においては,ラジカルの2次元配列が見いだされた.前者結晶のペレットの室温における電導度は8×10^<-8>S/cm^<-1>であって、セレンと同程度の電導度をもつ半導体であることが示された。2.第10族,11族元素複合錯体の構成,構造,分子物性.新規複合錯体[M(mnt)_2{Ag(PR_3)_2}_2],(M=Pt,Pd;R=Bu,Ph;mnt^<-2>=maleonitriledithiolate)の生成を見いだし,それらの構造と電気化学的挙動等を調べた.これらの錯体は,結晶内で平面状のM(mnt)_2の上下に2つのAg(PR_3)_2が結合した3核錯体構造をもつ.これら錯体のCVは,化学的に可逆な1電子酸化波を示したが,生成カチオンラジカルは単離できるほどには安定ではなかった.^<195>Pt-NMRはAg核による分裂を示さず,Pt-Ag結合距離が短いにも拘わらず,Pt-Ag間には化学結合の存在しないことが示された.