- 著者
-
林 葵
佐藤 大介
大角 誠一郎
辻 明紀子
西村 公宏
関根 理
森野 勝太郎
卯木 智
前川 聡
- 出版者
- 一般社団法人 日本糖尿病学会
- 雑誌
- 糖尿病 (ISSN:0021437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.3, pp.132-138, 2020-03-30 (Released:2020-03-30)
- 参考文献数
- 29
症例は27歳,女性.産後7日目から食思不振と全身倦怠感が出現し,産後25日目に意識障害を認めたため救急搬送され,糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKAと略す)と高アンモニア血症のため緊急入院となった.DKAの改善後も見当識障害と高アンモニア血症は遷延した.先天性代謝異常の既往や家族歴はないが血中アミノ酸分画を測定したところ血中シトルリン低値であり,尿素サイクル異常症が示唆された.亜鉛欠乏(49 μg/dL)に対して亜鉛補充を開始したところ,高アンモニア血症と血中シトルリンは正常化し,見当識障害は改善した.以上の経過から,亜鉛欠乏による一過性のオルニチントランスカルバミラーゼ活性低下から高アンモニア血症を来したと推察された.本例のような長期の食思不振から低栄養状態が疑われる場合には,亜鉛欠乏に伴う一過性高アンモニア血症も鑑別に挙げる必要があると考えられる.