- 著者
-
辻 晶子
- 出版者
- 大阪電気通信大学
- 雑誌
- 若手研究
- 巻号頁・発行日
- 2019-04-01
本研究は、中世の天台寺院で稚児を対象にして行われた密教儀礼「児灌頂」に関する総体的考究を試みるものである。児灌頂とは、稚児を観音菩薩の化身へと変化させ聖性を発現させることを目的として中世の天台僧が修した儀礼である。今東光『稚児』(1936)がきっかけとなり一般に知られ、近年では稚児のセクシュアリティを強調する形で拡大されている。申請者はこれまで児灌頂の諸本研究に取り組み、テキストに則して儀礼を分析することで「児灌頂とは何か」という根本的な問い対する答えを提示してきた。これを承けて本研究では、近世以前の談義所寺院における児灌頂伝本の書写活動に焦点を当て、児灌頂儀礼の生成と流伝の解明を目指す。