著者
須藤 博明 辻 美代子 卯西 元
出版者
The Japanese Society for Pediatric Nephrology
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.33-37, 2000
被引用文献数
1

腎性低尿酸血症は,腎における尿酸クリアランスが亢進し尿酸の体内プールが減少している病態である<sup>1)</sup>。近年本症患者が,運動後急性腎不全を起こしやすいことが明らかになった<sup>2)</sup>。今回運動後急性腎不全を発症した15歳の男子を経験した。<br> 患者は,3日前運動会の後から腹痛と嘔吐を訴え,昨日から眼瞼浮腫を認め入院した。尿量約2,000ml,体重72.4kg (通常68kg),血圧154/90mmHg。<br> <b>血清生化学所見:</b> 尿素窒素39.9mg/dl,クレアチニン5.3mg/dl,尿酸4.3mg/dl。<br> <b>尿所見:</b> 蛋白 (+/-),潜血 (-),糖 (-),尿沈渣異常なし。<br> 非乏尿性急性腎不全と診断し,輸液,安静と塩分制限で治療したところ,腎機能は順調に改善した。回復時に体重は63.6kgとなり,血清尿酸値は0.6mg/dlと低値となった。5カ月後に施行したPyrazinamideとBenzbromarone抑制試験の結果から分泌前再吸収障害型の遺伝性腎性低尿酸血症と診断した。非乏尿性腎不全では血清尿酸値にも注目し,適切な治療と低尿酸血症者に対 して発症予防の指導が必要である。