34 0 0 0 OA 繊毛病

著者
中西 浩一 吉川 徳茂
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.127-131, 2012-11-30 (Released:2012-12-22)
参考文献数
9

繊毛は細胞表面から突出する小器官であり,気管などに存在する運動性の繊毛と,ほぼすべての細胞に存在する非運動性の一次繊毛が存在する。一次繊毛の役割は長らく不明であったが,近年,一次繊毛とその関連構造物の遺伝子変異により腎嚢胞,肝臓・胆管異常,内臓逆位,多指症,脳梁低形成,認知障害,網膜色素変性症,頭蓋・骨格異常,糖尿病など多岐にわたる異常を生じることが明らかになった。これら一群の繊毛機能不全疾病を称して繊毛病(ciliopathy)と呼ぶ。腎徴候を呈する繊毛病としては,常染色体優性および劣性多発性嚢胞腎,ネフロン癆,Joubert syndrome,Bardet-Biedl syndrome,Meckel-Gruber syndromeなどがある。繊毛病の多くは腎嚢胞を合併するため,腎嚢胞は繊毛病の診断上重要である。
著者
清水 正樹
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-5, 2021 (Released:2021-04-15)
参考文献数
9

浮腫とは細胞外液が血管外の間質に生理的な代償能を超えて過剰に貯留した状態である.その原因は多岐にわたり,①毛細血管内の静水圧上昇に起因するもの,②毛細血管内の膠質浸透圧低下に起因するもの,③血管透過性の亢進に起因するもの,④リンパ系およびリンパ系が流入する静脈系の還流障害に起因するものが挙げられる.浮腫の診察に際しては,浮腫の性状と分布を知ることが重要であり,圧痕があるか,ないか,圧痕の回復時間の遅い slow edema か,早い fast edema か,全身性浮腫なのか,局所性浮腫なのかをしっかり評価する必要がある.浮腫の病態は個々の症例ごとに,また病期により変化する.したがって浮腫に対しては,診察,検査所見の評価に基づいた適切な対応が求められる.
著者
底田 辰之 澤井 俊宏 岩井 勝 野村 康之 竹内 義博
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.55-59, 2007-04-15 (Released:2007-11-15)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

症例は8歳,男児。3歳時に自閉症と診断され,養護学校に通学中である。平成17年11月16日,生来初めてのインフルエンザHAワクチンの接種を受けた。接種3日後より発熱があり,近医にて解熱剤,抗生剤を処方されていた。改善がないため再診したところ,強い炎症反応がみられたため入院となった。熱源不明のまま抗生剤投与を続けられたが,発熱の持続とともに急激な腎機能低下が判明したため当科に紹介入院となった。軽度の尿異常および尿中β2ミクログロブリンの著明な高値などから急性尿細管間質性腎炎を疑い,持続血液濾過透析を行いながらステロイドパルス療法を実施したところ,透析開始後6日目で利尿が得られ,以後順調に回復した。腎生検の結果から急性尿細管間質性腎炎であることを確認した。患児に投与された種々の薬剤を抗原としてリンパ球幼若化試験を実施したところ,インフルエンザHAワクチンの関与が疑われた。
著者
亀井 宏一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.rv.2021.0003, (Released:2021-10-22)
参考文献数
29

免疫抑制薬内服中は,国内外の添付文書やガイドラインでは生ワクチンは併用禁忌とされている.一方で,免疫抑制薬内服中は感染症が重症化するリスクが高い.免疫抑制薬内服下での生ワクチン接種はこれまで 21 報告あり計 400 名に 816 回接種されており,致命的な合併症の報告はない.当センターでは,一定の免疫学的条件(CD4 細胞数≥500/mm3,PHA リンパ球幼若化反応のstimulation index≥101.6,血清 IgG≥300 mg/dL) を満たす場合,免疫抑制薬内服下での生ワクチン接種を施行してきた.抗体獲得率は麻疹 80.0~95.7%,風疹 100.0%,水痘 59.1~61.9%,ムンプス 40.0~69.2%で,ワクチン株ウイルス感染症は 1 名のみ(水痘ワクチン,免疫基準設定前の症例)であった.また,全国多施設研究でも約 2/3 の専門医が免疫抑制薬内服下での生ワクチン接種を必要と感じており,781 名の接種者中ワクチン株ウイルス感染症を発症したのは 2 名のみであった.免疫抑制薬下でも弱毒生ワクチンは有効で安全である可能性が高い.今後は,添付文書やガイドラインの文言の修正などを行っていくことが必要である.
著者
灘井 雅行
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.111-123, 2006-11-15 (Released:2007-07-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

一般に,薬物の薬理効果および有害作用の発現強度は薬物の血中濃度によって決定されることから,十分な薬物の効果を得るためには,作用部位において適切な薬物濃度を維持することが必要である。また,個々の患者において,有効かつ安全な治療効果が期待できる血中薬物濃度に基づいて薬物投与設計を最適化することにより,有害作用発現の危険性を回避し,薬物治療の成績を向上することが可能である。しかし,生体に投与された薬物は体内で吸収,分布,代謝,排泄を受けることから血中の薬物濃度は経時的に変化する。したがって,患者における血中濃度の時間的推移(体内動態)を速度論(薬物速度論)に基づいて理解することが必要である。そこで本稿では,薬物速度論の基礎と,薬物速度論に基づいた薬物投与設計の構築,さらに治療薬物モニタリング(TDM)における個々の患者の血中薬物濃度を用いた薬物投与計画の妥当性の評価について概説する。
著者
森本 哲司
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.70-75, 2013-04-15 (Released:2013-10-15)
参考文献数
18

腎臓は,水・電解質の調節機構の主役として,さまざまな生理的役割を果たしているが,胎生期は,その役割の多くの部分を胎盤が担っている。しかし,出生とともに著しい体外環境変化が生じるため,腎機能はこれにすばやく対応する必要がある。例えば,出生時の体表面積あたりの糸球体濾過率(GFR)は成人の20%,生後2週間で40%,生後2か月には50%となり,1~2歳ごろにほぼ成人レベルに達することが知られている。この急速なGFRの増加は1)出生後の腎血管抵抗低下,2)ネフロン数の増加,3)ネフロンサイズの増大によると考えられている。このGFRの増加に加え,離乳期にみられる尿濃縮力の成熟や水・電解質輸送の変化などが,体外環境への適応とともに成長と発達を保証するために腎臓内で起こる。本稿では,生後に起こるこれら腎機能(GFR,Na排泄能,尿濃縮機構など)の発達について概説する。
著者
亀井 宏一 宮園 明典 佐藤 舞 石川 智朗 藤丸 拓也 小椋 雅夫 伊藤 秀一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.179-186, 2011-11-15 (Released:2012-10-25)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

免疫抑制薬内服患者への生ワクチン接種は添付文書上では禁忌とされている。しかしながら,免疫抑制薬内服患者はウイルス感染症で致命的となるリスクが高く,接種が望ましいという意見もあり,予防接種ガイドラインでは禁忌にはなっていない。今回われわれは,免疫抑制薬内服中で,麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜについて酵素抗体法で (-) か (±) を示した腎疾患または膠原病患者に,当院倫理委員会承認後に患者毎に十分な説明を行い,生ワクチン接種を行い,抗体獲得率と有害事象について前向きに検討した。40名 (1~24歳) に,55接種 (MRワクチン22接種,水痘ワクチン18接種,おたふくかぜワクチン15接種) 施行した。抗体獲得率は,麻疹 (90%) と風疹 (93%) は高く,水痘 (44%) およびおたふくかぜ (43%) は低かった。2名に発熱,1名に発疹,1名にネフローゼの再発を認めたが,重篤な有害事象はなかった。免疫抑制薬内服中でも生ワクチン接種が有効である可能性が示唆された。
著者
伊藤 秀一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.rv.2015.0005, (Released:2016-02-10)
参考文献数
16

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療に当たり,それが全身性疾患であるゆえ,治療開始前の網羅的臓器病変の評価は欠かせない。また,Sjögren 症候群,抗リン脂質抗体症候群の評価も行う。ループス腎炎は,小児SLEにおいてほぼ必発で,生命予後にも影響する臓器病変であり,治療法の決定に大きく影響するため腎生検は必須である。疾患活動性は,抗dsDNA 抗体,補体,赤血球沈降反応の3 指標で評価するが,皮膚,血球減少,神経ループス,血栓性検血小板減少性紫斑病については,これらの指標と関係なく発症する場合がある。SLE/ループス腎炎の治療の基本はステロイド薬である。一方,ステロイド薬の早期減量による低身長の防止,原病の再燃防止,腎不全への進行阻止のために免疫抑制薬の併用が必要である。2015 年に新たに承認されたMMF は,成人SLEでは寛解導入および維持に有効であり,小児にも広く用いられ,疾患予後を改善するであろう。今後のSLE の治療は,合併症や薬剤の副作用がなく,健常人と変わらない生活が可能となることを目標とする必要がある。
著者
白髪 宏司
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.129-133, 2015 (Released:2015-11-15)
参考文献数
4

要旨: 血液ガスの新しい分析方法を考案しそれについて述べた。その方法は,ペア解析法に基づく7 アクション法からなる。ペアとなる因子は血清Na とCl,血清K とpH,pHとpCO2,pCO2 とHCO3−,そしてアニオンギャップ計算に用いる因子である。7 アクション法をどのように進めるかについて詳細に述べた。ことに,血清(Na-Cl)値から酸塩基平衡異常の一部の病態が推測できる事実を強調した
著者
相馬 洋紀 高田 彰 斉藤 雅彦 石川 健 千田 勝一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.101-104, 2005-11-15 (Released:2007-11-06)
参考文献数
9

急性腎不全のため高カリウム血症をきたした2歳から10歳の小児4例と,成人1例に対してβ2抹刺激薬,サルブタモールの吸入療法を行い,その効果を検討した。サルブタモール吸入前の血清カリウム値は5.5~7.4mEq/Lで,サルブタモールは100μg/kg(体重25kg以上には5mg)を使用した。この30分~2時間後に4例で陽イオン交換樹脂を,1例でグルコース・インスリン療法を併用した。この併用前の吸入30分後に評価できた2例の血清カリウム値は,1例が6.3mEq/Lから6.0mEq/Lへ,もう1例が6.9mEq/Lから6.0mEq/Lへ低下した。全症例の吸入前と吸入4時間後の血清カリウム値は,中央値で6.3mEq/L(範囲5.5~7.4)から5.2mEq/L(範囲4.6~7.0)へと有意に低下し,この間に動悸,頻脈,振戦などの副作用は認めなかった。サルブタモール吸入は高カリウム血症の初期治療として有効であり,簡便かつ安全な治療法と考えられた。
著者
石津 明洋
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.81-85, 2014 (Released:2015-05-11)
参考文献数
13

MPO-ANCA 関連血管炎(MPO-AAV)は,myeloperoxidase(MPO)を抗原とする抗好中球細胞質抗体(ANCA)の出現とともに,糸球体をはじめとする小型血管が侵される壊死性血管炎である。MPO-ANCA 自体の病原性が確認されているが,その産生機序は不明であった。我々は好中球細胞外トラップneutrophil extracellular traps(NETs)の異常がMPO-ANCA 産生の原因となることを報告した。活性化された好中球はNETs を形成する。NETs は重要な生体防御システムであるが,適切に処理されなければ,DNA とともに細胞外に放出されたMPO が自己抗原となり,MPO-ANCA 産生が誘導される。一方,MPO-ANCAにはNETs 誘導活性があるなど,MPO-AAV 患者ではNETs の過剰に陥りやすい状況があり,NETs とMPO-ANCA 介した悪循環が病態を形成している。
著者
木全 貴久 蓮井 正史 北尾 哲也 山内 壮作 下 智比古 田中 幸代 辻 章志 金子 一成
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.27-33, 2012-04-15 (Released:2012-12-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

近年,ステロイド依存性や頻回再発型のネフローゼ症候群に対する,リツキシマブ治療の有効性が相次いで報告され,難治性ネフローゼ症候群に対する新規治療薬として期待されているが,その投与法は確立していない。筆者らは「ネフローゼ症候群に対してリツキシマブを投与すると,末梢血B細胞は,平均100日間枯渇化するが,B細胞数の回復とともにネフローゼ症候群が再発する」との報告に基づいて,「リツキシマブ投与後3~4か月のB細胞数回復期に追加投与を行い,B細胞数を10個/μl以下に維持すれば,長期寛解を維持できるのではないか」と考え,リツキシマブ375mg/m2 (最大500mg) を3か月毎に4回反復投与する,という治療法の有効性と安全性の検討を行っている。本論文ではこのリツキシマブ反復投与法の自験例を紹介するとともに,難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ治療の文献的レビューを行う。
著者
坂井 清英
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.rv.2017.0004, (Released:2018-03-19)
参考文献数
32

小児先天性腎尿路異常 (CAKUT: congenital anomalies of the kidney and urinary tract) は,小児期から若年層の末期腎不全の原因疾患としておよそ1/3 を占めるというエビデンスが示されていることから,できるだけ早く発見して,治療を要する症例に対しては可及的早期に介入していくことが望まれる。超音波検査 (US: ultrasonography) は,医療施設においては時と場合を選ばずに容易に低侵襲で施行できる検査であり,胎児期からのスクリーニングも可能で,新生児・乳児にも安全に行うことができる。さらには出生後の診断の確定や,CAKUT 治療中の経過観察やアウトカムの評価のためにも主役となる検査方法である。また,2016 年に日本小児泌尿器科学会より小児先天性水腎症 (腎盂尿管移行部通過障害) と膀胱尿管逆流 (VUR: vesicoureteral reflux) の診療手引きが発表された。その内容も含めてUS の役割の観点から解説する。
著者
坂井 清英
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-11, 2018 (Released:2018-04-15)
参考文献数
32

小児先天性腎尿路異常 (CAKUT: congenital anomalies of the kidney and urinary tract) は,小児期から若年層の末期腎不全の原因疾患としておよそ1/3 を占めるというエビデンスが示されていることから,できるだけ早く発見して,治療を要する症例に対しては可及的早期に介入していくことが望まれる。超音波検査 (US: ultrasonography) は,医療施設においては時と場合を選ばずに容易に低侵襲で施行できる検査であり,胎児期からのスクリーニングも可能で,新生児・乳児にも安全に行うことができる。さらには出生後の診断の確定や,CAKUT 治療中の経過観察やアウトカムの評価のためにも主役となる検査方法である。また,2016 年に日本小児泌尿器科学会より小児先天性水腎症 (腎盂尿管移行部通過障害) と膀胱尿管逆流 (VUR: vesicoureteral reflux) の診療手引きが発表された。その内容も含めてUS の役割の観点から解説する。
著者
三浦 健一郎 服部 元史
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.77-85, 2019 (Released:2019-11-22)
参考文献数
31

体液量と水電解質異常の評価およびそれに基づいた輸液の選択は小児診療における日常的な課題である.低張液輸液による hospital-acquired hyponatremia (医原性低ナトリウム (Na) 血症) の危険性が指摘され,維持輸液として等張液を用いることが推奨されるようになった.しかし,その根拠となった文献において低張液輸液で症候性低 Na 血症や死亡などの重篤な有害事象の発生頻度が有意に増加することは示されておらず,現時点において維持輸液として画一的に等張液を選択するということについては疑問が残る.むしろ,実際の患者の状態を観察し,抗利尿ホルモンの分泌刺激となりうる病態の評価を行いつつ,維持輸液開始後に適切なモニタリングを行うことが重要である.このためにも,基本的な脱水,血清Na異常の病態理解と評価が重要であり,体液量と総陽イオン量で血清Na 値をとらえる概念が非常に有用である.
著者
柳澤 敦広 乾 健彦 生井 良幸 高梨 潤一 藤井 克則 水口 雅 関根 孝司 五十嵐 隆
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.161-165, 2009-11-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

腸管出血性大腸菌 (enterohemorrhagic E. coli: EHEC) 感染症を契機に発症した溶血性尿毒症症候群 (hemolytic uremic syndrome: HUS) の重篤な合併症として,脳症がある。脳症の臨床像・病態生理は複雑である。今回われわれが経験したHUSに合併した脳症は,急性壊死性脳症 (acute necrotizing encephalopathy of childhood: ANE) に特徴的な画像所見を示していた。 こういった例はHUSに合併した脳症のなかでも,特に重篤な経過をたどりやすいようだ。また,サイトカインの関与も示唆された。HUSに対する既存の治療法では不十分であり,発症機序,管理・治療法に関するさらなる検討が必要と思われる。
著者
石川 真紀子 清水 順也 金谷 誠久 白神 浩史 久保 俊英 中原 康雄 後藤 隆文
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.224-229, 2011-11-15 (Released:2012-10-25)
参考文献数
15

シスチン尿症は腎尿細管,小腸上皮におけるシスチンと二塩基性アミノ酸の吸収障害を本態とする疾患であり,尿路結石の頻回再発やそれに伴う腎不全への進展が問題となる。症例は,結石分析,尿中アミノ酸分析にてシスチン尿症と診断し,重曹による尿アルカリ化治療を行っていた2歳男児である。定期受診時に,顕微鏡的血尿と,超音波および腹部CTにて左水腎水尿管と左膀胱尿管移行部に巨大結石を認めた。体外衝撃波結石破砕術は適応外と判断し,開腹にて尿路結石除去術を施行し,術後は十分な尿量確保と尿アルカリ化の継続,シスチン易溶化薬剤の内服を開始した。シスチン尿症の管理においては尿路結石の再発予防が最も重要となるが,乳幼児期での十分な尿量確保や蛋白制限は困難なことが多い。本症例を通してシスチン尿症の適切な管理法について考察し報告する。
著者
元吉 八重子 市川 家國
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.166-171, 2009-11-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
28

糸球体疾患において,高分子蛋白尿の量が多いほど末期腎不全へと移行するリスクが高く,蛋白尿は腎疾患の指標であるのみでなく,さらなる腎傷害の原因となる可能性がある。 糸球体から漏出した様々な蛋白質は,主にmegalinというレセプターを介したエンドサイトーシスにより管腔側から近位尿細管細胞へと取り込まれ,ライソソームへと運ばれて分解されるか,そのまま基底膜側へと運ばれる。それにともなって,MCP-1やRANTESなどの炎症に関わるメディエーターや,TGF-βなどの線維化に関わるメディエーターが尿細管間質に放出される。また,近位尿細管のアポトーシスも惹き起こされる。このように,漏出した蛋白質が直接的な尿細管傷害の起因となることによって悪循環を形成し,慢性腎不全を進行させている可能性がある。
著者
藤村 順也 石森 真吾 神岡 一郎 沖田 空 親里 嘉展 西山 敦史 米谷 昌彦
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2016.0090, (Released:2016-12-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1

インフルエンザウイルス (flu)ワクチン接種,flu 感染は小児特発性ネフローゼ症候群 (NS)再発の誘因となるがその詳細を検討した報告はない。今回,flu ワクチン接種または感染を契機としてNS 再発に至った小児6 例を報告する。flu ワクチン接種によるNS 再発が3 例 (以下,ワクチン再発例),flu 感染によるNS 再発が3 例 (以下,感染再発例)で全例が男児であった。flu ワクチン,感染後に全く再発のないNS 例を対象とし,その背景を検討した。ワクチン再発例では,ワクチン接種3 回全てをNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期に行っており対照群 (15 回中3 回)よりも多かった。感染再発例においても,flu 感染3 回全てがNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期で対照群 (5 回中0 回)よりも多かった。flu ワクチン,感染に伴ったNS 再発には,背景に症例毎の病勢の影響が存在するかもしれない。本検討は症例数が少なく,今後大規模な多施設共同研究が望まれる。