著者
辻村 千尋
出版者
地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.07, pp.150-154, 2016 (Released:2018-05-01)
参考文献数
5

自然保護の観点で、太陽光発電などの再生可能なエネルギー開発がもたらす自然破壊・生物多様性への悪影響について、その本質がどこにあるのかを考察した。その結果、再生可能エネルギーとはいえ、その地域の歴史を反映した、その地域で培われてきた自然・文化景観を破壊している原因は、開発を前提とした環境影響評価の制度しかないこと、国土デザインや土地利用計画立案段階での自然への影響評価をする制度・仕組みがないことであることを指摘した。つまり自然や文化の状況ではなく、人間のみの都合で土地利用のゾーニングが行われており、そのことが地域での軋轢につながっている。この解決のためには、将来の省エネルギー社会と、生物多様性保全を充分に考慮した上での計画立案段階のアセスメント(戦略アセスメント)を実施し、生物多様性保全を損なわずに、どのような方法で、再生可能な自然エネルギーを供給するかの国土デザインを、国民の声を充分に取り入れて作ることが、最も重要である。
著者
辻村 千尋
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100084, 2015 (Released:2015-04-13)

リニア中央新幹線計画は、JR東海によって計画されている、東京~大阪間をほぼ直線で結ぶ超伝導方式の鉄道計画である。昨年の12月に起工式が行なわれ、着工となり、2027年までに名古屋までの区間を完成させる予定である。本計画ではその8割が地下トンネルで残りの2割が橋梁という計画で、南アルプスを土被り1400mで通過する計画となっている。これらのことを踏まえ、関連する自治体、環境省、自然保護団体からは環境への影響が甚大になることへの危惧について意見が表明されてきた。演者は昨年秋の大会において、本計画に関する自然保護上の問題点を、手続きの観点、国土デザインの観点、合意形成の進め方の観点から提起し、地理学分野が果たすべき役割について問題提起をおこなった。本報告では、自然保護の観点から環境行政上の改善点を提言する事により地理学会の果たすべき役割について議論を深めたい。