著者
吉永 明弘
出版者
富山大学地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.77-83, 2016

本論文では、環境倫理学のさまざまな議論を用いて、太陽光発電施設の問題を読み解くことを試みた。特に、太陽光発電施設の批判側の議論の中にある、〈環境にやさしい技術が環境を壊している〉という矛盾に対する憤りや、地域エゴ・NIMBYと言われかねない言説を取りあげ、紛争解決を考えた場合にそれらの意見をどう捉えたらよいかを考察した。そのうえで、太陽光発電施設を設置する際に考慮すべき点として、(1)太陽光発電施設が人間の利便性のための施設である点を自覚して、設置方法や設置場所、利益配分などを考慮すべきこと、(2)合意形成のためには、地域の声を圧殺してはならないことを提言した。
著者
辻村 千尋
出版者
地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.07, pp.150-154, 2016 (Released:2018-05-01)
参考文献数
5

自然保護の観点で、太陽光発電などの再生可能なエネルギー開発がもたらす自然破壊・生物多様性への悪影響について、その本質がどこにあるのかを考察した。その結果、再生可能エネルギーとはいえ、その地域の歴史を反映した、その地域で培われてきた自然・文化景観を破壊している原因は、開発を前提とした環境影響評価の制度しかないこと、国土デザインや土地利用計画立案段階での自然への影響評価をする制度・仕組みがないことであることを指摘した。つまり自然や文化の状況ではなく、人間のみの都合で土地利用のゾーニングが行われており、そのことが地域での軋轢につながっている。この解決のためには、将来の省エネルギー社会と、生物多様性保全を充分に考慮した上での計画立案段階のアセスメント(戦略アセスメント)を実施し、生物多様性保全を損なわずに、どのような方法で、再生可能な自然エネルギーを供給するかの国土デザインを、国民の声を充分に取り入れて作ることが、最も重要である。
著者
鈴木 晃志郎
出版者
富山大学地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.3-11, 2013

地域生活学研究会の年報『地域生活学研究』は、大学図書館のリポジトリを活用し、大学の内外、専門のいかんを問わず幅広く寄稿できる実験的な電子ジャーナルとして新たな出発を遂げようとしている。本論文は、当該誌刊行の今日的意義について、特に近年急速に台頭しているメガ=ジャーナルへの批判的検討を踏まえて述べるとともに、メガ=ジャーナルの長所を包含する形で研究機関(とりわけ地方国立大学)における電子ジャーナルのあり方を探り、実践的な地域貢献の実験場として、『地域生活学研究』がもつ可能性についての提言をおこなうことを目的とする。
著者
浅川 初男
出版者
地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.06, pp.46-60, 2015 (Released:2018-05-01)
参考文献数
6
著者
立瀬 剛志 小嶋 一輝 松村 和起
出版者
富山大学地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.30-40, 2018

薬物やアルコール依存症からの回復を目指すリハビリテーションを行う上で、ハームリダクションという考え方がある。これは、違法薬物の使用をただ禁止するのではなく、必要に応じ使用を許容ことによって健康上のあるいは社会・経済的な悪影響を減少させることを目的とする。一方、日本の政策においては薬物乱用防止や検挙に主眼が置かれており、行政は十分な薬物依存回復支援を行っているとはいえない。実際の依存症からの回復支援はDARC等の民間団体が主翼を担っている。今回、これらの団体における依存症リハビリテーション支援がどのように実践されているのかハームリダクションの概念を軸に実態調査を行い、依存症回復を妨げる要因について考察した。<br>【方法】富山県で依存症回復リハビリテーション事業を行うNPO法人富山DARC(ダルク)、家族支援を行うHARP(北陸アディクションリカバリーパートナーズ)に趣旨を説明し、承諾を得てインタビューや参与観察を行った。<br>【結果と考察】調査の結果、DARCでは、薬を断った後の社会生活を重視するプログラムを中心にハームリダクションが実践されていた。また行政による薬物乱用防止事業だけでは、依存症からの回復には不十分であることが確認された。さらに、依存症者本人は回復の過程で様々な困難や偏見を受けることや、依存症患者を持つ家族に対しても精神的回復のための支援が必要であることが分かった。依存症者を再犯防止ではなく依存症回復の支援につなげることが重要であり、依存症者への偏見から必要な医療を受ける機会を奪うことは避ける必要がある。
著者
武本 俊彦
出版者
地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.07, pp.42-50, 2016 (Released:2018-05-01)
参考文献数
8

日本の農山村では、メガソーラーバブルが起きている。その主な原因は、固定価格買取制度(FIT)の導入に加え、日本の土地利用制度が、土地所有権の絶対性の観念が優越し、公共の福祉の観点から制定されたルールに基づいて利用させるシステム(欧米の制度のように、地域全体の土地が、「計画なくして開発なし、建築不自由の原則」の下に置かれ、地域の制定したルールに基づく場合に限って開発・建築が認められること)になっていないことによるものである。日本の土地利用制度が、このような欧米の制度とは異なった形で成立したことを歴史的に分析し、パネル設置などの地域における今後の開発行為に伴う紛争を回避するための制度のあり方を提言する。すなわち、必要な法改正への取り組みが基本であるものの、ただちに実現できるかどうかが不確実であることから、当面、分権改革によって与えられた「自治体の法令解釈権」を活用していくことを提言する。