著者
辻村 敬三
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.41-50, 2013 (Released:2020-01-26)
参考文献数
6

本研究は,文学的な文章を読む指導における範読について,実際に行われている状況を調査によって把握し,範読時にどのような学習活動を伴わせることが効果的であるかについて,実験を通して検討することを目的とした。調査からは,範読のねらいが,内容の大体を理解させることと,物語を享受させることの2つに分かれている状況がとらえられた。また,範読時の学習活動は様々な内容が混在しており,ねらいとの関連性が十分意識されていない状況であることが確認された。実験からは,平均得点については,範読時の学習活動による顕著な差は認められなかったが,得点分布状況からは,「大事だと思う言葉や文に線を引きながら聞かせる」ことが,学力低位の児童に効果があることが示された。以上のことから,範読を行う際には,ねらいと指導方法の関連性を明確にした上で,児童に「線を引く」などの具体的な学習活動を行わせることに効果が期待できることが示唆された。