- 著者
-
辻村 清也
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
(1)バイオアノード電極と酵素の直接電子移動反応に基づいたアノード極の作成を目指し,電極表面および構造の改良を行い,電流密度を従来報告されている系の100-1000倍に向上させることに成功した.酵素としては酢酸菌由来のフルクトースデヒドロゲナーゼ,グルコン酸デヒドロゲナーゼに注目した.また,酸化生成した難酸化性有機酸を二酸化炭素まで酸化し,さらに燃料として利用するために,微生物細胞(本研究では大腸菌)の代謝経路の利用を検討し,適切なメディエータを導入することで,例えば酢酸の電気化学的酸化に成功し,そのメカニズム,制御機構について検討した.(2)バイオカソードアノードと同様に,よりシンプルな電池設計を目指したマルチ銅酵素と電極間の直接電子移動に基づくカソード構築に向けて検討した.細孔を制御した多孔性炭素の利用などによる電極構造の改善,大腸菌由来CueO,白色腐朽菌由来ラッカーゼなどの新規酵素の検討により,酸素の拡散律速となるバイオカソードを作成することができた.また,電位をコントロールした変異体酵素を用いその電極反応解析を行い,変異導入が酵素活性に及ぼす影響を考察した.さらに,電気化学測定と水晶振動子マイクロバランス測定とを組み合わせることにより電極上への酵素の吸着および活性挙動の解析・評価を行い,酵素修飾電極の改善に向けた指針を明確にした.(3)バイオ電池フルクトースデヒドロゲナーゼ,ラッカーゼをそれぞれアノード極,カソード極の電極触媒として用い,酵素電極間の直接電子移動反応を利用したシンプルな無隔膜型(一室型)果糖-酸素バイオ電池の作成に成功した.起電力は0.8Vであり,1平方センチメートルあたりおよそ1mWの電力を得ることに成功した.また,果実から直接電力を得ることに成功した.