著者
武者 篤 一戸 達也 新谷 誠康 布施 亜由美 鈴木 奈穂 福島 圭子 大串 圭太 五味 暁憲 黒田 真右 辻野 啓一郎 横尾 聡
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.154-159, 2018

<p>mTOR阻害剤のエベロリムス(アフィニトール<sup>®</sup>)は結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫に有効であるが,口腔粘膜炎が高頻度に発症することが報告されている.今回,エベロリムスの内服治療を行うことになった結節性硬化症患者の口腔管理を経験したので報告する.</p><p>患者は20歳,男性.既往として結節性硬化症,知的能力障害,てんかん,腎血管筋脂肪腫がある.腎血管筋脂肪腫に対する治療としてエベロリムス10mgを内服開始するにあたり,泌尿器科主治医より歯科受診を勧められ当施設を受診した.口腔粘膜に異常所見は認めないが清掃状態は不良であり,頰側転位している上顎左側第二小臼歯鋭縁による口腔粘膜炎発症が懸念された.第二小臼歯の予防的な抜歯と定期健診および口腔衛生指導を行うこととした.頰側転位している第二小臼歯は6カ月後に抜去した.その後数回にわたり口腔清掃不良の時期と一致して軽度な口腔粘膜炎(grade 1)の発症があったものの食欲減退はなく,重篤な口腔粘膜炎発症によるエベロリムスの減量や中止にいたることはなかった.抜歯後も継続して月1回の定期健診を行っているが,口腔粘膜炎が重篤化することはなく,エベロリムス内服治療へ影響することはなかった.</p><p>本症例は口腔粘膜炎を最小限に抑えることができ,重篤な口腔粘膜炎が原因の内服治療の中止や腎血管筋脂肪腫の増大を起こすことなく経過している.これは主治医との連携と,定期健診や口腔衛生指導が適切に行えたことによると考えられた.</p>
著者
辻野 啓一郎 町田 幸雄
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.670-683, 1997-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
30
被引用文献数
1

幼児期から青年期まで矯正処置などをすることなく正常咬合となった小児28名(男児13名女児15名)について,2か月間隔に得られた上下顎累年石膏模型を用いて,暦齢では3歳から20歳まで,歯牙年齢では各永久歯出齦時を基準とし出齦後7年から14年まで,乳犬歯,第一乳臼歯,第二乳臼歯,犬歯,第一小臼歯,第二小臼歯,第一大臼歯,第二大臼歯の各歯列弓幅径について観察した。乳犬歯間幅径,第一乳臼歯間幅径,第二乳臼歯間幅径は6歳頃まで増加量がわずかであったが,この時期乳犬歯間幅径はほぼ安定し,上顎第二乳臼歯間幅径は増加量が最も大きかった。その後は,各部位ともに漸次増加を示し,切歯萌出期では乳犬歯間幅径の増加が特に大きかった。犬歯間幅径は出齦時から上顎では13歳頃,下顎では15歳頃まで,減少を示しその後安定した。歯牙年齢での観察で出齦後1年まで萌出に伴う減少が著明であった。上顎第一小臼歯間幅径は歯牙年齢では出齦後6か月まで減少が見られたが,その後は著明な変化はみられなかった。下顎第一小臼歯間幅径,第二小臼歯間幅径では出齦後数年間増加がみられたがその後は著明な変化はみられなかった。第一大臼歯間幅径は上顎では15歳頃まで漸次増加し,下顎では出齦後数年間わずかに増加後ほぼ安定していた。第二大臼歯間幅径は上顎では出齦後2年まで減少を示し,下顎では萌出初期は不安定であり,その後はほぼ安定していた。暦齢と歯牙年齢による観察の結果の差違は,上下顎犬歯間幅径で特に著明であった。