- 著者
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藤縄 理
近藤 公則
立川 厚太郎
地神 裕史
廣瀬 圭子
松永 秀俊
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2009, pp.C3O3043-C3O3043, 2010
【目的】<BR>水泳飛び込み選手で肩関節脱臼による腱板損傷受傷後4週で競技復帰を果たし、国体高飛び込みで準優勝した症例を経験した。そのアスレチックリハビリテーション(リハ)における理学療法(PT)経過を分析して報告する。<BR>【方法】<BR>選手の記録を元に損傷と機能異常についてのPT評価とプログラムを後視的に分析した。損傷はMRIにより確認され、整形外科的治療と病院でのPT経過およびプールサイド(PS)でのPT経過を検討した。<BR>【説明と同意】<BR>本研究は埼玉県立大学倫理委員会に承認され、対象者には研究の内容を口頭ならびに文章で説明し書面にて同意を得た。<BR>【結果】<BR>(1)受傷状況:8/16入水時に左上肢が外側に離れて受傷。直後腫脹と疼痛が強く、三角巾で吊ろうと肩甲帯部を保持して体幹を起こしたら自然に整復された。(2)診断と病院でのPT経過:MRIにて左棘上筋の大結節停止部の損傷が確認された。8/22よりPT開始、9/8まで15回実施。(3)病院での治療方針:1)バストバンド固定中は安静重視、2)固定中は、頸部、体幹、両股関節、両足関節の可動性拡大と筋力向上を中心とする、3)固定中の左肩関節筋力維持は右上肢の筋力トレ-ニング(筋トレ)での同時収縮を実施、4)固定解除後はできるだけ無痛の範囲で、左肩関節の可動域(ROM)拡大を重点的に実施、5)左肩関節のROM拡大と痛みの軽減に応じて骨運動を伴う筋トレを実施。(4)PT経過:8/22~バストバンド固定。左肩関節以外のROM訓練、筋トレを中心に行う。8/29バストバンド終了、他動ROM訓練が許可。左肩関節ROM屈曲120°、外転90°、外旋20°、内旋35°。棘上筋、三角筋中部に痛み。筋トレは左肩関節を固定して左肩甲骨の内外転を実施。9/1国体合宿開始。プール内歩行練習許可。左肩関節ROM屈曲145°、外旋30°、内旋30°。筋トレはセラバンド(黄色)でのinner muscle運動を開始。9/3プール内で水泳練習開始。左肩関節ROM屈曲170°、外転140°。練習後プールサイド(PS)初回:肩前方に痛み、時々自発痛あり、自動運動ROM外転 90°で痛み(P)、外旋30°P、内旋 80°P、水平内転60°P、他動運動ROM外転90°P・120°で筋性防御(+)、関節副運動検査は筋性防御のため不可、触診で棘上筋、棘下筋、肩甲下筋スパズム・過敏、Mulligan 法の運動併用モビライゼーション(MWM)により外転全ROM無痛で可能。プログラム-MWM、テープ、自己治療(セラバンド運動継続)。9/4左肩が挙げやすい、平泳ぎ可能とのこと。筋トレは左肩関節各方向に軽い徒手抵抗を加え実施。PS2回目:プログラム-自己MWM追加。9/7コーチの判断で7.5Mからの飛び込みを実施。PS3回目:前方からの飛び込み無痛、後方からは痛み。プログラム追加-PNF、MWM(300gの重りを持ち)。9/8コーチの希望で病院でのリハ終了。左肩関節ROM屈曲170°、外転170°、外旋60°、内旋70°。左肩周囲筋MMTは3~4。9/9PS4回目:速い外転-外旋運動で痛み、プログラム追加-深部マッサージ、機能的マッサージ、PNF、MWM (500gの重りを持ち)。9/11PS5回目、試合前日:プログラム継続。9/12PS6回目、試合当日:肩の痛み無し、腰痛出現、プログラム追加-腰部Mulligan手技。<BR>【考察】<BR>症例は入水時両手が離れ、肩が外転し強力な水圧が加わって脱臼と腱板損傷を起こしたと考えられる。受傷2週後よりプールで泳ぎの練習を開始し、練習後のPS初回評価では、時々自発痛があり、外転でインピンジメント、筋スパズムにより運動を防御していたため、亜急性期と考えられた。しかしMulliganのMWMで上腕骨頭を後下方に滑らせて外転すると無痛であった。また、触診により筋スパズムは損傷した棘上筋よりも肩甲下筋により強く、外旋ROMを制限していた。そこで、骨頭が後下方に軽く牽引されるようにテーピングをして、肩甲骨と骨頭の位置関係を常に意識して、インピンジメントを起こさないような挙上運動の学習に重点を置いた。同時にセラバンドで骨頭を正しい位置に保持する運動を継続してもらった。最終的には軽い重りを持ったMWM挙上運動とPNFにより、インピンジメンとを起こさないような運動パターンを学習させた。コーチも肩関節に負担がかからない演技のパターンを工夫し、好成績に結びつけることが出来た。医師、PT、コーチが連携し、選手が意欲を持ってアスレチックリハとトレーニングに取り組んだ成果と考える。<BR>【理学療法研究としての意義】<BR>アスレチックリハにおいて、PTは運動機能を適切に評価し、適切な時期に最良のプログラムを実施することで、スポーツ現場で貢献できるエビデンスを本報告は提示している。<BR>