著者
松永 秀俊 山野 薫 上田 周平 村田 伸 吉澤 隆志 武田 功
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.675-678, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
16

〔目的〕運動後,伸張強度が筋に与える影響について書かれたものは散見する程度であり,運動療法施行上,核心が無いままで行われているのが現実である。そこで,我々は筋伸張強度と筋の回復効果との関連について検討した。〔方法〕運動負荷後,異なった強度での伸張運動を行い,時間の経過と共に筋硬度および体表温度の変化を計測し,それを基に効果判定を行った。〔結果〕筋伸張強度の違いによる筋の回復効果には一部有意な差を認めた。〔結語〕運動負荷後の筋の回復には強い伸張で行う必要はなく,軽い伸張でも十分効果的である可能性が示唆された。
著者
山野 薫 小寺 正人 小堀 博史 西川 仁史 松永 秀俊 秋山 純和
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.467-473, 2011 (Released:2011-09-22)
参考文献数
17
被引用文献数
2

〔目的〕2010年4月に理学療法士免許を取得した理学療法士(新人理学療法士)を対象にリスクマネジメントに関する不安について,その現状把握と問題点の整理をおこなった.〔対象〕新人理学療法士47名(平均年齢23.9±3.8歳)とした.〔方法〕自記式アンケート調査により,回収した回答を分析した.〔結果〕新人理学療法士の診療を行ううえでの不安の第1位は「自分の評価や治療に自信がないこと」(31人)であった.職場の規則やシステムなどにおける不安の第1位は,「緊急時に組織の一員としての動きに自信がないこと」(19人)であった.〔結語〕新人理学療法士のリスクマネジメントに関する不安は,個人の能力に帰属する卒前教育の要素と入職直後に取り組む施設内教育システムの要素があることがわかった.
著者
吉澤 隆志 松永 秀俊 藤沢 しげ子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.13-17, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
12

〔目的〕積極的に映像を流す形式(映像授業)と従来授業における授業意識の比較と,学習意欲との関係を検討した。〔対象〕某A専門学校理学療法学科学生(91名)とした。〔方法〕映像授業と従来授業とを実施し,映像授業における授業意識アンケート結果について因子分析を行い,両授業の下位尺度得点を比較した。また,映像授業における下位尺度得点と学習意欲アンケート結果との相関を調べた。〔結果〕映像授業における因子分析結果のうち第1因子(授業や将来に対する意欲)は,従来授業よりも下位尺度得点が高かった。また,第1因子は学習意欲の中でも特に内発的動機づけと学院への適応度との相関が見られた。〔結語〕映像授業は,従来授業よりも内発的動機づけや学院への適応度を高めることのできる授業形式であると考えられた。
著者
和泉 健太 武内 耕太 寺坂 聖子 中島 寛貴 正意 敦士 小田桐 匡 松永 秀俊
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.H4P3270-H4P3270, 2010

【目的】日常生活において、我々は座る対象を選択することなくかつ安全に座るという一連の手続きを、無意識のうちに行っている。ところが、実際に臨床では能力的に低下を認める高齢者や脳血管障害患者などは、座るという動作が必然的に増加するにも関わらず、着座する際に対象物に対して尻もちをつく(転倒)傾向があるように感じる。この着座に至るまでの手続きには、様々な筋を動員することで身体制御を行っていることから、原因に下肢の筋力低下が疑われ、筋力や動作に伴う重心移動の観点からについて様々な報告がある。しかし、着座の手続きには対象物の高さや座面などの情報を視覚としてとらえる入力プロセスが含まれており、その情報と身体情報とを照合することで正確な運動が行われ、安全な着座動作に至ると推測される。このように入力情報に基づいて脳内処理を行い、動作に変換するプロセスについては十分研究がされていない。<BR>本研究では、上記の背景に基づいて、アイマークレコーダーと三次元動作解析装置を用いて、着座動作における最低限の視覚情報と頸部の動き(体性感覚)による入力情報から、対象物への安全な着座動作、特に高さを決定する機構について検討することにした。<BR><BR>【方法】21~22歳の視覚異常がなく、着座を行う対象物が十分に見える程度の視力を有した健常男子大学生3名(身長:170。2±3。19;平均値±標準偏差)を対象とした。<BR> 対象物は幅16cmのものを使用し、高さは本研究内で高さによる違いを検討するため、20cm、40cm、60cmの3種類の高さが設定できる昇降台を使用した。<BR> 被験者は、対象物に向かって、両肩関節90度外転位で閉眼している状態で、約1m先に対象物を配置した。被験者は合図とともに閉眼した状態で基本的立位をとり、対象物に対して向きなおった後、対象物に向かって左足を踏み出した際に験者によって「A(着座する)」または「B(着座しない)」の指示が与えられた。被験者は指示の入力と同時に開眼し、対象物手前で回転した後、指示に則した動作を行う試行とした。対象物の高さについては不規則に提示されるものとした。<BR> その他、被験者に対する注意としては、尻もちをつかないように着座すること、カメラの間から対象物を注視すること、できるだけ早い動作で行うことを指示した。<BR> 運動反応中の身体運動は、三次元動作解析装置(MAC 3D System、nac IMAGE TECHNOLOGY社製)を用い計測され、眼球運動については、アイマークレコーダー(EMR-8、nac IMAGE TECHNOLOGY社製)を用い、瞳孔/角膜反射法によって計測された。また、得られた視線データは同時にVTRに記録され、対象物への注視時間を計測した。高さごとに視線データを計測し、高さによる傾向を分析した。統計処理は二元配置分散分析、T検定を用いて多重比較を行った。統計学的有意水準を5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】被験者には、本研究の目的、方法、安全性、個人情報の保護等についての十分な説明を行い、裸眼での実験への参加について同意を得た。<BR><BR>【結果】頸部屈曲角度は、着座なし条件で対象物が低いほど小さくなる傾向を示し、着座あり条件では対象物が低いほど大きくなる傾向を示した。注視時間は、着座なし条件では高さによる影響を受けなかったが、着座あり条件では対象物が低いほど注視時間が短縮する傾向をみとめた。このうち対象物の高さが20cmと60cmの間で、着座あり条件における注視時間に有意差を認めた(p<0.05)。<BR><BR>【考察】着座なし条件においては対象物が高くなるにつれて注視する座面の位置が高くなり、それに対応して頸部屈曲角度は小さくなるが、着座条件が付随しないために運動変換の必要がなく、視覚による情報を重要としなかったため、時間に変化が認められなかったと考えられる。着座あり条件においては、方向転換後にアクションを起こさなければならず、脳内での運動変換プロセスの負担は対象物が低くなるにつれて大きくなるために着座という動作を優先することから、注視時間が有意に短かったのではないかと考える。<BR> 以上より、様々な高さの対象物に対する着座動作には、頸部の屈曲角度より視覚による入力情報が優先され、その量は脳からのアウトプットが正確に遂行できるだけの最低限量で入力されることが示唆された。また、対象物が低くなる(運動量が大きくなる)ほど、脳内処理時間が延長することも推測された。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】今後、本研究を基に脳血管障害患者や高齢者など、対象とする範囲を拡大することで、安全な動作獲得による生活レベルの向上には視覚へのアプローチが重要となることが考えられる。今後も視覚情報と身体運動との関連性に着目し研究していきたい。
著者
松永 秀俊 奈良 直貴 彌永 修一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.796-796, 2003

【はじめに】昼間部3年間、夜間部4年間の両学部の教育指導に当たって、両者の持つ不安に多く直面した。それぞれの特徴として昼間部学生(以下、昼間部)は級友とのトラブル、進級に関する問題など多くの不安を訴えるが深刻なものは少ない。それに対し、夜間部学生(以下、夜間部)は訴える不安は少ないが、経済問題など、一度表面化すると深刻なものが多く認められた。そこで、両学部を入学時から継続的に不安について調査し比較・検討することで、何らかの傾向を見つけ、事前に対策を講じることができることを期待し入学時及び定期試験前に調査を行った。【対象と方法】平成14年度理学療法学科に入学した昼間部40名(男性28名、女性12名)(既婚者3名)、平均年齢22.1±4.14歳と夜間部40名(男性37名、女性3名)(既婚者6名)、平均年齢25.2±4.71歳の計80名を対象とした。 対象者全員に対し入学式終了後(以下、入学時)、及び、前期定期試験1週間前(以下、前期試験時)にMAS(Manifest Anxiety Scale:日本版MMPI)を用いた不安検査を行い、両群を比較した。また、同時に、その不安の要因を探るために、LazarusらのDaily Hassles Scaleをもとにした宗像の日常苛立事尺度を用い検討した。30項目に対し、「日頃イライラを感じているかどうか」について、「大いにそうである」「まあまあそうである」「そうではない」の3段階で評定させ、それぞれ2、1、0点と得点化し、各項目の合計点を尺度得点とした。【結果】入学時に於けるMASの結果は昼間部で21.2±7.47、夜間部で17.8±7.95となり、若干、昼間部に点数の高い傾向が認められるが、両者間に有意差は認められなかった。更に、日常苛立事尺度の結果から、その不安要因として挙げられたものは夜間部では生活に密接した具体的なものであったが、昼間部では生活から懸け離れたものが多く認められた。 また、前期試験時に於けるMASの結果は昼間部で19.9±7.79、夜間部で15.2±7.43となり、入学時に比べ、夜間部の不安傾向が昼間部に比べ低いことを依然として示していたが、両群ともに不安傾向は改善していた。更に、日常苛立事尺度の結果から、夜間部では昼間部に比べ「家族への責任」「転職後の生活」などの不安要因が高く、昼間部では夜間部に比べ「人間関係」「外見・容姿」「陰口」などの不安要因が高かった。【まとめ】今回の結果から、初めての定期試験に対する不安より、入学時の不安が強いことが分かった。また、夜間部に比べ、昼間部は常に不安が強く、その要因についても学部ごとに特徴的であることが理解できた。 以下、今回の結果を更に分析し、後期試験時に予定しているデータの結果を加え報告する予定である。
著者
吉澤 隆志 松永 秀俊 藤沢 しげ子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.677-680, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
25

〔目的〕男女における下肢伸展トルクと膝伸展筋力の関係を調べることを目的とした.[対象]下肢に問題のない健常成人48名とした.〔方法〕StrengthErgoにより左右の下肢伸展動作時の体重比ピークトルクを測定した.また,Hand Held Dynamometerにより左右の体重比膝伸展筋力を測定した.その後,下肢伸展トルクと膝伸展筋力の関係を調べた.〔結果〕男女間での下肢伸展トルクについて有意差が認められたが,膝伸展筋力については有意差は認められなかった.また,男性では下肢伸展トルクと膝伸展筋力との間に中等度の相関がみられたが,女性では相関がみられなかった.〔結語〕男女における下肢伸展トルク発揮に対する膝伸展筋力の関与の違いがみられた.
著者
吉澤 隆志 松永 秀俊 藤沢 しげ子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.583-586, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
4 2

〔目的〕下肢伸展トルクと股屈伸筋力との関係を検討するために,StrengthErgoにより測定した下肢伸展トルクと,Hand Held Dynamometer により測定した股関節屈伸筋力との相関を調べた.[対象]下肢に問題のない健常成人50名とした.[方法]左右の下肢伸展動作時の体重比ピークトルクと,左右の体重比股関節屈伸筋力を測定した.次に,左右の下肢伸展トルクと股関節屈伸筋力との関係をスピアマンの相関係数を用いて調べた.[結果]左右の下肢伸展トルクは股関節屈曲筋力との間に強い相関,股関節伸展筋力との間に弱い相関が見られた.[結語]下肢伸展トルク発揮について股屈伸筋力の関与が示唆された.
著者
村田 伸 村田 潤 大田尾 浩 松永 秀俊 大山 美智江 豊田 謙二
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.509-515, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
42
被引用文献数
3 1

〔目的〕高齢者を対象にウォーキングによる運動介入を行い,その介入が身体・認知・心理機能に及ぼす効果について,無作為割付け比較試験によって検討した。〔対象〕地域在住高齢者69名(平均年齢72.0±4.4歳)である。〔方法〕ウォーキングによる運動介入の前後に,身体・認知・心理機能を評価し,比較検討した。〔結果〕週3日,1回につき30分のウォーキングを12週間継続できた介入群25名の測定値は,介入後6分間歩行距離が延長し,主観的健康感,生活満足度,生きがい感といった心理面の向上が認められた。一方,その他の指標とした上下肢筋力や立位バランスなどの身体機能,および認知機能には有意差は認められなかった。なお,統制群29名におけるすべての測定値に有意差は認められなかった。〔結語〕ウォーキングによる運動介入は,地域在住高齢者の介護予防や健康増進に有用である可能性が示唆された。ただし,身体機能や認知機能を向上させるためには,本研究における介入の期間や頻度,および運動強度などの検討がさらに必要であることが明らかとなった。
著者
藤縄 理 近藤 公則 立川 厚太郎 地神 裕史 廣瀬 圭子 松永 秀俊
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O3043-C3O3043, 2010

【目的】<BR>水泳飛び込み選手で肩関節脱臼による腱板損傷受傷後4週で競技復帰を果たし、国体高飛び込みで準優勝した症例を経験した。そのアスレチックリハビリテーション(リハ)における理学療法(PT)経過を分析して報告する。<BR>【方法】<BR>選手の記録を元に損傷と機能異常についてのPT評価とプログラムを後視的に分析した。損傷はMRIにより確認され、整形外科的治療と病院でのPT経過およびプールサイド(PS)でのPT経過を検討した。<BR>【説明と同意】<BR>本研究は埼玉県立大学倫理委員会に承認され、対象者には研究の内容を口頭ならびに文章で説明し書面にて同意を得た。<BR>【結果】<BR>(1)受傷状況:8/16入水時に左上肢が外側に離れて受傷。直後腫脹と疼痛が強く、三角巾で吊ろうと肩甲帯部を保持して体幹を起こしたら自然に整復された。(2)診断と病院でのPT経過:MRIにて左棘上筋の大結節停止部の損傷が確認された。8/22よりPT開始、9/8まで15回実施。(3)病院での治療方針:1)バストバンド固定中は安静重視、2)固定中は、頸部、体幹、両股関節、両足関節の可動性拡大と筋力向上を中心とする、3)固定中の左肩関節筋力維持は右上肢の筋力トレ-ニング(筋トレ)での同時収縮を実施、4)固定解除後はできるだけ無痛の範囲で、左肩関節の可動域(ROM)拡大を重点的に実施、5)左肩関節のROM拡大と痛みの軽減に応じて骨運動を伴う筋トレを実施。(4)PT経過:8/22~バストバンド固定。左肩関節以外のROM訓練、筋トレを中心に行う。8/29バストバンド終了、他動ROM訓練が許可。左肩関節ROM屈曲120°、外転90°、外旋20°、内旋35°。棘上筋、三角筋中部に痛み。筋トレは左肩関節を固定して左肩甲骨の内外転を実施。9/1国体合宿開始。プール内歩行練習許可。左肩関節ROM屈曲145°、外旋30°、内旋30°。筋トレはセラバンド(黄色)でのinner muscle運動を開始。9/3プール内で水泳練習開始。左肩関節ROM屈曲170°、外転140°。練習後プールサイド(PS)初回:肩前方に痛み、時々自発痛あり、自動運動ROM外転 90°で痛み(P)、外旋30°P、内旋 80°P、水平内転60°P、他動運動ROM外転90°P・120°で筋性防御(+)、関節副運動検査は筋性防御のため不可、触診で棘上筋、棘下筋、肩甲下筋スパズム・過敏、Mulligan 法の運動併用モビライゼーション(MWM)により外転全ROM無痛で可能。プログラム-MWM、テープ、自己治療(セラバンド運動継続)。9/4左肩が挙げやすい、平泳ぎ可能とのこと。筋トレは左肩関節各方向に軽い徒手抵抗を加え実施。PS2回目:プログラム-自己MWM追加。9/7コーチの判断で7.5Mからの飛び込みを実施。PS3回目:前方からの飛び込み無痛、後方からは痛み。プログラム追加-PNF、MWM(300gの重りを持ち)。9/8コーチの希望で病院でのリハ終了。左肩関節ROM屈曲170°、外転170°、外旋60°、内旋70°。左肩周囲筋MMTは3~4。9/9PS4回目:速い外転-外旋運動で痛み、プログラム追加-深部マッサージ、機能的マッサージ、PNF、MWM (500gの重りを持ち)。9/11PS5回目、試合前日:プログラム継続。9/12PS6回目、試合当日:肩の痛み無し、腰痛出現、プログラム追加-腰部Mulligan手技。<BR>【考察】<BR>症例は入水時両手が離れ、肩が外転し強力な水圧が加わって脱臼と腱板損傷を起こしたと考えられる。受傷2週後よりプールで泳ぎの練習を開始し、練習後のPS初回評価では、時々自発痛があり、外転でインピンジメント、筋スパズムにより運動を防御していたため、亜急性期と考えられた。しかしMulliganのMWMで上腕骨頭を後下方に滑らせて外転すると無痛であった。また、触診により筋スパズムは損傷した棘上筋よりも肩甲下筋により強く、外旋ROMを制限していた。そこで、骨頭が後下方に軽く牽引されるようにテーピングをして、肩甲骨と骨頭の位置関係を常に意識して、インピンジメントを起こさないような挙上運動の学習に重点を置いた。同時にセラバンドで骨頭を正しい位置に保持する運動を継続してもらった。最終的には軽い重りを持ったMWM挙上運動とPNFにより、インピンジメンとを起こさないような運動パターンを学習させた。コーチも肩関節に負担がかからない演技のパターンを工夫し、好成績に結びつけることが出来た。医師、PT、コーチが連携し、選手が意欲を持ってアスレチックリハとトレーニングに取り組んだ成果と考える。<BR>【理学療法研究としての意義】<BR>アスレチックリハにおいて、PTは運動機能を適切に評価し、適切な時期に最良のプログラムを実施することで、スポーツ現場で貢献できるエビデンスを本報告は提示している。<BR>
著者
村田 伸 甲斐 義浩 大田尾 浩 松永 秀俊 冨永 浩一 松本 武士 吉浦 勇次 北嶋 秀一 角 典洋
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.499-503, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
35
被引用文献数
3 1

〔目的〕女性高齢者の膝関節痛の有無と大腿四頭筋筋力との関連について検討した。〔対象〕整形外科医院に通院加療中の女性高齢者47名(平均年齢77.9±6.2歳),94肢とした。〔方法〕膝関節痛の有無,大腿四頭筋筋力,筋組織厚,大腿部周径を評価し,膝関節痛の有無別にそれぞれの測定値を比較した。〔結果〕膝関節に痛みがない群(45肢)の大腿四頭筋筋力は大腿部周径(r=0.56),筋組織厚(r=0.64)との間に有意な正相関が認められたが,膝関節痛有り群(49肢)の大腿四頭筋筋力は,大腿部周径や筋組織厚との間に有意な相関は認められなかった。〔結語〕今回の結果から,膝関節痛を有する高齢者の大腿四頭筋筋力の測定は,現在報告されている測定法では,潜在的に有する最大筋力を測定できない可能性があること,また,彼らの最大筋力を測定するための工夫や新たな測定方法を開発する必要性が示唆された。
著者
松永 秀俊 上田 周平 藤縄 理 安田 大典 武田 功
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101290-48101290, 2013

【はじめに、目的】多くの養成校においてアドミッションズ・オフィス(以下AO)入試が採用されている。AO入試は学生の個性や学ぶ意欲をアピール出来る反面、成績の低下が心配されている。また、進級が出来ない学生の中にAO入試での入学者の割合が多く占める様になり懸念されるところであるが、AO入学に関する論文は散見する程度であり、今後、入試形態を考慮する材料になることを期待し、今回、調査を行った。【方法】対象は平成21年4月に理学療法学科に入学した学生51名(男性31名,女性20名)(平均年齢18.1±0.4歳)とした。ただし、不安検査のみは正確性を高める目的で信頼性に問題のある無応答が10個以上ある者と妥当性に疑いのある嘘構点が11点以上の者の計2名は除外した。その結果、不安検査は対象者49名(男性30名,女性19名)(平均年齢18.1±0.4歳)を対象とした。 方法は対象者全員に対し、入学式後、前期講義開始前に行われたオリエンテーション終了後にManifest Anxiety Scale(以下MAS)を用いた不安検査とアンケートを行った。アンケートの内容は大学入学試験での初回受験日、年齢、性別、実家またはアパート・下宿等・その他からの通学かを尋ね、さらに実家と大学間の距離を確認するために実家に最も近い駅名(JR,私鉄,地下鉄)を所在県名とともに記載させた。さらに、入学後4年目に最終学年への進級が出来たか、または、進路変更・休学・留年等で出来なかったかを調査した。これらを基にAO入試での入学学生(以下、AO群)とそれ以外での入学学生(以下、一般群)間での比較・検討を行った。 統計処理は性別・通学方法・進級の可否の比較にはカイ二乗検定、年齢・実家からの距離にはマンホイットニーの検定、MASの比較には対応のないT検定を用い、危険率5%未満を有意確立とした。【倫理的配慮、説明と同意】調査に当たっては対象者全員に口頭でその主旨を伝え,協力の意志の有無を確認した。【結果】AO群は男性7名、女性3名、実家から通学している者6名、アパート・下宿等から通学している者4名、実家からの距離57.6±64.0km、年齢18.0±0.0歳、進路変更等なし4名、進路変更等あり6名、MASの点数18.6±5.3であった。AO群にはMASの不適格者がいなかったため、MAS対象者も全て同数であった。一般群は男性24名(MASの対象者は23名)、女性17名(MASの対象者は16名)、実家から通学している者22名(MASの対象者は20名)、アパート・下宿等から通学している者19名(MASの対象者は19名)、実家からの距離121.8±145.2km(MASの対象者は125.8±147.8km)、年齢18.1±0.4歳(MASの対象者は18.2±0.4歳)、進路変更等なし30名(MASの対象者は28名)、進路変更等あり11名(MASの対象者は11名)、MASの点数20.8±7.8であった。一般群にはMASの不適格者2名がいたため、MAS対象者の数値を別に記載した。これらの数値をAO群と一般群間で統計処理した結果、全てに有意差は無かった。【考察】岡本らはAO入学学生のメンタルヘルス問題の実態を把握し、支援の方法を検討した結果、AO入学学生のメンタルヘルス問題に関して、学生担当教員等の助言などのプライマリケアが必要であると同時に、早期からのサポート体制を検討していくことが重要であると述べている。また、八木らは入学者選抜におけるAO方式の有用性を検討した結果、AO方式による選抜が良好な結果をもたらしていることが検証されたと述べている。この様にAO入試による入学者に対する報告には様々な意見があり、その特徴について統一見解を得るための調査・検討は重要であると思われる。ただ、今回の結果から有意差が認められなかったことからAO群の特徴は見出せず、AO群と一般群には差はないと言う結果であった。しかし、対象者数を増やすことで有意差が得られる可能性があるものが認められたため、今後、さらに研究を続ける必要性を感じている。【理学療法学研究としての意義】AO入試を採用している理学療法の養成校は多い。しかし、AO入試は近年導入されたもので、その影響について論じられたものはほとんど無い。今後、入試形態の違いによる学生の特徴を把握し、それを理解した上での学生への対応が必要と考え、研究の継続の必要性を感じている。
著者
吉澤 隆志 松永 秀俊 藤沢 しげ子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.463-466, 2009 (Released:2009-07-24)
参考文献数
15
被引用文献数
4 3

〔目的〕平成19年度と20年度前期定期試験において,定期試験成績向上に学習意欲が影響を及ぼしたかを検討した。〔対象〕某A専門学校理学療法学科学生(101名)とした。〔方法〕平成19年度および20年度前期定期試験を基に各学生の偏差値を算出した。また,定期試験の直前に学習意欲に関するアンケートも実施した。ここで,定期試験において成績が向上した学生と低下した学生とについて,学習意欲アンケート結果との関係を多重ロジスティック回帰分析にて検討した。〔結果〕外発的動機づけと精神的健康度が有意な説明変数として抽出された。〔結語〕今後,学習意欲を向上させることの出来るような対応の検討を行っていきたいと考えた。