著者
石橋 信義 近藤 栄造
出版者
The Japanese Nematological Society
雑誌
日本線虫研究会誌 (ISSN:03882357)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-38, 1976-10-15 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

ネコブセンチュウ雄成虫の繁殖上の役割を明らかにするため, 単幼虫接種継代飼育で得られたMdoidogyne incognitaとM.haplaの2期幼虫1, 10, 20, 40, 60, 80,100,160頭をガラス管 (径7mm, 長さ10cm) 内のトマト幼苗に接種し, 施肥 (Hyponex 1,000倍液) または無施肥にして35日後に褐色卵嚢と雄成虫の出現率, 接種頭数あたり繁殖率等を調査した.褐色卵嚢と雄成虫は接種頭数の増加とともに増加した. 単幼虫接種区においても無施肥では.褐色卵嚢がごく低率ではあるが出現した.従って, 環境耐性が白色卵嚢よりも大であるとみられている褐色卵嚢の生成に, 雄成虫の関与は考えられない. 両線虫とも卵嚢着生率は10~20頭接種区が最も高かった.卵嚢内卵数は単幼虫接種区でやや少なく, 従って繁殖率 (卵嚢着生率×卵嚢内卵数) も10~20頭接種区で最大となった.M.incognitaは13世代まで, M.haplaは7世代まで単幼虫接種継代飼育を続けてきたが, 繁殖力が低下する傾向は認めていない.本実験では,雄成虫の役割について積極的に肯定すべきデータは何ら得られなかったが,完全に否定すべきものもまだ得ていないと思われる.