- 著者
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浴野 泰甫
吉賀 豊司
竹内 祐子
市原 優
神崎 菜摘
- 出版者
- 日本森林学会
- 雑誌
- 日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.180, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)
線形動物門(線虫)は最も繁栄している動物分類群のひとつであり、林学だけでなく、農学、水産学、医学的にも重要な生物群である。演者らは、線虫が繁栄できた要因のひとつとして虫体を覆うクチクラ層の構造に着目し研究を行っている。本報告では菌食性から植物寄生性、昆虫寄生性及び捕食性が複数回独立に進化しているAphelenchoididae科線虫をモデルとして、生活史の変遷とともにクチクラ微細構造がどのように変化しているか調査した。野外から同科線虫を採取し、塩基配列情報から系統的位置を明らかにするとともに、透過型電子顕微鏡を用いてクチクラ微細構造の観察を行った。その結果、菌食種は互いに類似のクチクラ構造を持っている一方、捕食種(=Seinura sp.)は菌食種の約10倍肥厚した最外層を持っていることが明らかになった。また、捕食行動観察では、Seinura sp.は菌食種に対して高い捕食率を示した一方、同種及び別種の捕食種とはほとんど食い合いをしなかった。よって、Seinura sp.は同種認識によらない共食い回避機構を持っており、肥厚した最外層がその機構の一つである可能性が示された。