- 著者
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近藤 民雄
大賀 祥治
- 出版者
- [九州大學農學部附属演習林]
- 巻号頁・発行日
- no.83, pp.97-113, 2002 (Released:2014-07-18)
優良形質木の大量増殖に最もかなった増殖方法として,通常さし木あるいは取り木が取り上げられる。クローン増殖がうまくいくかどうかは,多くの場合さし木あるいは取り木での発根の善し悪しで決められてしまう。このときにみられる不定根形成の原動力は,もともと無傷の個体で作動している内生オーキシン固有の発根制御作用と考えられる。従ってさし穂のホルモン処理は,極性移動する内生オーキシンが持つ本来の器官形成能に対する強化助長の処理とみなすことができる。オーキシン処理およびオーキシン以外のホルモンによる処理について概説すると共に,オーキシン処理の際発根部位にあたる,さし穂の基部でどのような生理的反応が進み,あるいは増幅されているか,主として発生上の対応と生化学的反応とに分けて紹介した。さし穂のオーキシン処理は従来含浸とか,塗沫といった一段の処理として取り扱われているが,むしろ誘導処理と始動処理とからなる二段の処理として取り扱うのが適当と判断された。つまり根の原基発生への誘導処理と,それに続く原基発達への始動処理とからなる二段処理として取り扱うのが,処理の実際面からも,また発根の仕組を理解する上からも妥当と考えられた。また内生オーキシンには発根について,促進と制御という2つの相反する作用の内生が予想され,誘導期には前者が,始動期には後者の軽減除去がそれぞれ優先することで発根促進がもたらされると理解される。