著者
近藤 稔和
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

胸腺退縮は被虐待児の特徴の一つであるとされ,虐待によるストレスによって胸腺のリンパ球にアポトーシスが誘導されることによって生じると考えられている.そのアポトーシスの過程においてサイトカイン・ケモカインの関与が示唆されている.そこで,マウスにおけるストレス誘発性胸腺退縮におけるサイトカイン・ケモカインの役割を解析する.野生型マウスで1日1時間拘束ストレスにさらすと,胸腺が退縮することを明らかにした.さらに,胸腺のT細胞に様々なケモカインレセプターが発現してることに着目した.ケモカインレセプターの1つCCR5に着目した.そこで,CCR5遺伝子欠損マウスと野生型マウスを拘束ストレスに供したところ,両マウスで胸腺が退縮したがCCR5遺伝子欠損マウスでは,胸腺退縮に対して抵抗性を示した.実際,胸腺細胞のアポトーシス細胞はCCR5遺伝子欠損マウスで減少し,Fas及びFasリガンドの遺伝子発現が抑制されていた.このことから,CCR5を介したシグナルがFas及びFasリガンドの遺伝子発現を制御しているものと考えられた.次に,CX3CR1ケモカインレセプターに着目し,CX3CR1遺伝子欠損マウスを同様に拘束ストレスに暴露した時の胸腺の変化についてみたところ,CX3CR1遺伝子欠損マウスでは胸腺退縮の程度が軽減していた.また,胸腺細胞のアポトーシスについても,野生型マウスでは胸腺細胞の多数のアポトーシス細胞を認めたが,CX3CR1遺伝子欠損マウスでは,アポトーシス細胞の数が明らか減少していた.さらに,副腎皮質ホルモンについては,CX3CR1遺伝子欠損マウスに比べて野生型マウスでは優位に増加していた.すなわち,CX3CR1遺伝子欠損マウスでは副腎皮質ホルモンを抑制することでストレス誘発性胸腺退縮に対して抵抗性を示すことが明らかになった.
著者
佐藤 保則 近藤 稔和 大島 徹
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学十全医学会雑誌 (ISSN:227226)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.530-537, 1996-08-01
被引用文献数
2

自殺者総数は1,374例(男841例,女533例)であり,年次別にみると177~221例の間を推移しており,年間平均は196例であった.季節では春と秋に多発する傾向がみられ,曜日別では月曜に最も多く土・日曜には少なかった.又,自殺の最も多い年齢層は男女とも50歳代であり,60歳代迄の全年齢層で男の自殺者数が女を上回っていたが,70歳代以降では女の方が多かった.自殺手段は男女とも縊頸が過半数(男59.9%,女54.0%)を占め,次いで男ではガス(10.9%),女では入水(21.0%)が多かった.自殺の場所は屋内,特に自宅屋内が多く,発見者の多くは自殺者の同居家族であり,自殺者の58.2%は無職者であった.自殺の動機は病苦,精神疾患の順に多く,最近の不況を反映して経済的理由が漸増する傾向がみられた.又,10.2%の自殺者が過去に自殺企図歴を有していた