著者
西岡 みどり 住田 正幸 大谷 浩己 奥本 均 上田 博晤 近藤 育志
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1985

1)わが国で最も普通のトノサマガエルとダルマガエル、著しい体色変化をするアマガエル、特殊な色素細胞をもつアオガエルを主材料として、正常の体色と色彩突然変異について、形態学的、遺伝学的研究を行なった。2)トノサマガエル群では、褐色または緑色の正常色彩、配偶子の放射線照射によって得た9系統の色彩突然変異、野外で発見されたアルビノの10系統、その他黒色眼と灰色眼突然変異について、遺伝と色素細胞の微細構造について調べた。特にアルビノについては、次の重要な新知見を得た。(i) アルビノには遺伝子座の異なる5群があり、第1群は4種類の対立遺伝子によって支配される。(ii) 各アルビノは、外観および黒色素胞内に含まれるプレメラノソームに明らかな違いがある。(iii) 2遺伝子座でアルビノ遺伝子が同型接合になった12種類のアルビノを作り、各アルビノ遺伝子の表現の優劣を明らかにした。(iv) アルビノのトノサマガエルと正常のダルマガエルとの間の戻し雑種について、遺伝子型とランプブラシ染色体の組成との対比,および連鎖と転座の利用によって、各遺伝子の染色体上の位置を推定した。そのほか、オリーブ色と青色の各突然変異遺伝子座のある染色体を推定した。3)アオガエルでは、変態後黄色素胞の一部が下方に移動して、紫色素胞となり、退化した黒色素胞の代りをすることを確かめた。4)トノサマガエル、アマガエル、アオガエル、ツチガエルの黒色眼または灰色眼突然変異が、単一劣性遺伝子によって支配されることを確かめ、それぞれの色素細胞の異常を電顕観察によって明らかにした。5)トノサマガエル、ニホンアカガエル、ツチガエルを用い、色彩突然変異体と正常個体との間の前後キメラを作ったところ、前部が正常のものでは、それの色素細胞が癒着面を越えて後方に移動するが、特に虹色素胞が著しい移動をすることが確かめられた。