著者
倉林 敦 住田 正幸 広瀬 裕一 浮穴 和義 澤田 均 中澤 志織 逸見 敬太郎 ベンセス ミゲル マローン ジョン ミンター レスリー ド プリーツ ルイス
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

フクラガエルが生殖時に用いる糊の物理的特性と化学成分、および糊候補遺伝子の探索を行った。本研究の結果、フクラガエル糊の接着強度は、およそ500g/cm2であり、その主要構成要素は蛋白質であることが分かった。さらに、糊物質候補は、他のカエルで報告されていた皮膚分泌物と似た3種の蛋白質と、1種の新規蛋白質があることが示唆された。また、アメフクラガエルについて、人工繁殖を試みた。その結果、Amphiplexと呼ばれるゴナドトロピン誘導ホルモン作動薬とドーパ混合ホルモン剤が、本種の排卵を促すことを明らかにし、世界で初めて飼育下での人工的な交尾の促進と、営巣・産卵までの観察に成功した。
著者
西岡 みどり 住田 正幸 大谷 浩己 奥本 均 上田 博晤 近藤 育志
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1985

1)わが国で最も普通のトノサマガエルとダルマガエル、著しい体色変化をするアマガエル、特殊な色素細胞をもつアオガエルを主材料として、正常の体色と色彩突然変異について、形態学的、遺伝学的研究を行なった。2)トノサマガエル群では、褐色または緑色の正常色彩、配偶子の放射線照射によって得た9系統の色彩突然変異、野外で発見されたアルビノの10系統、その他黒色眼と灰色眼突然変異について、遺伝と色素細胞の微細構造について調べた。特にアルビノについては、次の重要な新知見を得た。(i) アルビノには遺伝子座の異なる5群があり、第1群は4種類の対立遺伝子によって支配される。(ii) 各アルビノは、外観および黒色素胞内に含まれるプレメラノソームに明らかな違いがある。(iii) 2遺伝子座でアルビノ遺伝子が同型接合になった12種類のアルビノを作り、各アルビノ遺伝子の表現の優劣を明らかにした。(iv) アルビノのトノサマガエルと正常のダルマガエルとの間の戻し雑種について、遺伝子型とランプブラシ染色体の組成との対比,および連鎖と転座の利用によって、各遺伝子の染色体上の位置を推定した。そのほか、オリーブ色と青色の各突然変異遺伝子座のある染色体を推定した。3)アオガエルでは、変態後黄色素胞の一部が下方に移動して、紫色素胞となり、退化した黒色素胞の代りをすることを確かめた。4)トノサマガエル、アマガエル、アオガエル、ツチガエルの黒色眼または灰色眼突然変異が、単一劣性遺伝子によって支配されることを確かめ、それぞれの色素細胞の異常を電顕観察によって明らかにした。5)トノサマガエル、ニホンアカガエル、ツチガエルを用い、色彩突然変異体と正常個体との間の前後キメラを作ったところ、前部が正常のものでは、それの色素細胞が癒着面を越えて後方に移動するが、特に虹色素胞が著しい移動をすることが確かめられた。
著者
住田 正幸 倉林 敦 井川 武 ISLAM Md.Mafizul 中島 圭介
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1.ニホンアカガエルの灰色眼と黒色眼の2つの色彩突然変異を用いて、皮膚が透明で内臓が透けて見える透明ガエルを効率的に作製し、その遺伝様式を明らかにした。透明ガエルの作製には灰色眼♀×野生型(ヘテロ)♂の交配が最も効率的であった。また、透明ガエルの皮膚の微細構造を調べるため、真皮色素細胞を電子顕微鏡で観察した。その結果、野生型では黄色、虹色、黒色の色素細胞が層状に観察されたが、透明ガエルでは色素細胞の数が少なく、未熟な黄色素胞様の細胞だけが見られた。2.I-SceI を用いたツメガエルの遺伝子導入法をニホンアカガエルに適用するため、顕微注入法の条件検討を行った。インジェクション効率および遺伝子導入効率の評価には赤色蛍光タンパク質mCherry mRNAとEF1αプロモーター連結EGFP/I-SceIベクターを用いた。その結果、受精卵に顕微注入した2日後に mCherry を発現した胞胚が得られた。3.透明ガエルについて色素細胞の変異をもたらす責任遺伝子を同定するため、次世代シークエンサを用いて皮膚から抽出したmRNAの塩基配列を決定し、得られた配列群を利用して皮膚の遺伝子発現プロファイルを構築するとともに、それぞれの遺伝子発現量の比較を行った。実験には野生型、黒色眼、灰色眼および透明ガエルを用いた。これらの皮膚RNAを抽出し、cDNAライブラリ作成、シークエンスを行った。その結果、合計約30Gbpの塩基配列を得た。これらについてアセンブラを用いてコンティグ配列を構築したところ、約23万の遺伝子配列が出力された。このコンティグ配列に各サンプルのリードをマッピングし、各遺伝子にマップされたリード数を統計的手法により群間比較したところ、黒色眼と透明ガエルでは1238、灰色眼と透明ガエルでは387の発現変動遺伝子が検出された。遺伝子ネットワーク解析の結果、前者ではアミノ酸生合成経路、後者ではホルモン刺激などに関わる遺伝子群との関連性が示唆された。