著者
加藤 直志 小島 千枝子 小野 高裕 近藤 重悟
雑誌
リハビリテーション科学ジャーナル = Journal of Rehabilitation Sciences
巻号頁・発行日
no.9, pp.27-38, 2014-03-31

本研究では,"綿チップ押しつぶし" 課題の有用性について検討した.第1実験では,嚥下障害者を含む102 名を対象に"綿チップ押しつぶし" 課題後の綿球のつぶれ具合とJMS 舌圧測定器の最大舌圧の相関分析,回帰分析を行い,綿球のつぶれ具合で舌圧を推測できるかを調べた.第2実験では,健常若年者20 名を対象に,綿チップ押しつぶしを教示に用いた嚥下(MS),Effortful swallow(ES),普通嚥下の舌圧発現様相を比較し,嚥下課題の教示に用いることの有効性を調べた.その結果,第1実験では,舌圧=12.117 + 67.961 ×綿球水分変化量の回帰式が得られ(R2 =0.568),第2実験では,MS はES とほぼ同等に舌圧持続時間と舌圧最大値が高値を示し,さらに,MS では綿チップの押しつぶし課題でターゲットとした部位の舌前方部(Ch1)の舌圧発現が他測定点より有意に早く,Ch1の舌圧持続時間はES より有意に延長した.以上のことから,"綿チップ押しつぶし" 課題は,嚥下訓練において多彩な訓練ツールとして用いることができることが示された.