- 著者
-
重本 心平
堀 一浩
宮島 久
小野 高裕
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会
- 雑誌
- 老年歯科医学 (ISSN:09143866)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.106-117, 2020-09-30 (Released:2020-10-25)
- 参考文献数
- 48
背景:低栄養は入院患者の回復に妨げとなるが,Nutrition Support Team(NST)における歯科医師の貢献の可能性は十分に明らかにされていない。 目的:嚥下障害が疑われる総合病院入院患者の栄養リスク状態に関連する要因を明らかにすること。 方法:2015年4月から2019年4月までに総合病院歯科口腔外科に嚥下障害の疑いで紹介された同院入院中の患者を対象とした。Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いて,栄養リスク中等度/高度群(GNRI<92)となし/軽度群の2群(GNRI≧92)に分類し,残存歯/義歯による咬合支持域,義歯使用の有無,最大舌圧,咀嚼能力,反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,嚥下内視鏡検査による兵頭スコア,意識レベル,食形態レベルとの関連について検討した。 結果:315名中285名が栄養リスク中等度/高度群と判定され,栄養リスクなし/軽度群と比べて有意に年齢が高く,女性が多く,義歯を使用していない者が多く,義歯を含めた咬合支持域は有意に少なく,咀嚼能率スコアと兵頭スコアも有意に低かった。また,常食摂取群では他の食形態群に比較してGNRIが有意に高かった。二項ロジスティック回帰分析の結果,低栄養状態と関連する項目は,年齢,非経口摂取,兵頭スコアであった。 結論:嚥下障害が疑われる総合病院入院患者の低栄養リスクにかかわる因子がわかり,そのなかに口腔に関する要因が含まれていた。