著者
永易 あゆ子 鈴木 麻希子 近藤(比江森) 美樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.55, 2012 (Released:2012-09-24)

[目的] 加齢に伴う身体機能の低下は、高いQOLを営む上で重要な行為の一つである食事への興味・関心の低下につながる。高齢者の約90%は白内障をはじめとする視覚異常を患っている。食事に対して、その55%が視覚からの刺激を受けることから、料理の色彩や料理と盛り付け皿の色の組み合わせが食欲に与える影響は大きい。本研究では、煮豆を数種類の色の器に盛り付け、料理の判別やおいしさを感じる感覚について、正常観察および白内障模擬体験眼鏡をかけた場合を比較検討した。[方法] 調査は、本研究に対して同意が得られたO大学の栄養学科3年生40名を対象に、2011年6月に視覚調査を行った。異なる色を有する5種類の煮豆(白いんげん豆、大豆、赤いんげん豆、緑えんどう豆、黒大豆)を、白、黄、赤、青、緑、黒の6色の皿(今回は、各色のナプキンで色を演出した)に盛り付け、正常観察、次いで模擬体験眼鏡をかけた場合に、「判断しやすい」あるいは「おいしそう」と感じる組み合わせについて順位法による回答を求め、得点化した。[結果および考察] 正常観察では、「判断しやすい」と「おいしそう」の組み合わせはほぼ一致し、白皿が好まれる傾向にあったが、白いんげん豆の場合、「判断しやすい」のは黒皿であるが「おいしそう」は白皿で得点が高かった。一方、模擬体験眼鏡をかけた場合も同様の傾向を示したが、白いんげん豆では、「判断しやすい」と「おいしそう」ともにコントラストの強い黒皿で高得点となり、「おいしそう」と感じるためには、まずは「判断できる」ことが重要であることが示唆された。
著者
近藤(比江森) 美樹 新家 大輔 長尾 久美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.71, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】シカ肉は、牛肉や豚肉に比べて低脂肪、鉄分やビタミンB群が豊富であり、栄養面で高い価値を有する食材である。そのため、近年深刻化する有害野獣問題の対策の一環として実施されている害獣駆除において、捕獲されたシカを食肉資源として有効利用する取り組みが行われている。一般に畜肉は、屠体を低温下で一定期間保存し、プロテアーゼ等の作用により保水性や旨味成分が増加して軟らかく美味しい肉質に変化した熟成肉として流通している。現在徳島県では、シカ肉は指定の加工所で解体後、3℃で2~3日の熟成後に真空包装して冷凍販売されているが、その熟成条件の設定は経験等によるものである。本研究では、熟成期間中の物理変化や旨味成分の挙動を解析することにより、シカ肉に適する熟成条件を検討した。【方法】徳島県で冬期に捕獲された野生のシカ(雌)、3頭を処理加工施設で屠殺後、直ちに左右のロースを採取した。ロースを約6 cm幅に分割して真空包装後、3℃で一定期間(0~24日間)熟成させた。熟成後、試料の重量変化、遠心保水性、クッキングロス、色調を測定した。さらに、一部の肉片を成分分析用の試料として-30℃で冷凍保存した。解凍してミンチ状にした試料から核酸関連化合物および遊離アミノ酸を抽出後、HPLC-PDAおよび自動アミノ酸分析装置により定量し、旨味成分の挙動を確認した。【結果】熟成11日目に遠心保水性の上昇とクッキングロスの低下が認められた。旨味成分の挙動では、核酸系の旨味成分である5’-イノシン酸は熟成初期に増大し、その後減少した。一方、アミノ酸系の旨味成分であるL-グルタミン酸は11日目以降に著しく増加した。これら理化学的性質および旨味成分の挙動を指標にシカ肉の熟成条件を検討した結果、真空包装下3℃で保存した場合、おおよそ11日間の熟成期間が必要であることが示唆された。本研究は、徳島文理大学「平成28年度 特色ある教育・研究(課題番号TBU2016-3-1)」の助成を受けて実施した。