- 著者
-
遠藤 典子
- 出版者
- 一般社団法人 日本原子力学会
- 雑誌
- 日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.6, pp.329-334, 2018 (Released:2020-04-02)
- 参考文献数
- 2
福島第一原子力発電所事故(以下,福島第一事故)による損害の賠償を求める訴訟が,全国の地方裁判所(支部を含む。以下,地裁)で提起されている。これらの訴訟の多くは,東京電力と並んで,国を被告としている。その最初の判決は,平成29年3月17日の前橋地裁が言い渡した東京電力と国の一部敗訴である。これに加え,続く9月22日の千葉地裁判決,10月10日の福島地裁判決を通じ,国の違法性について,「津波の予見可能性」,「結果回避可能性」などの争点が浮かび上がってきた。前橋地裁と福島地裁は,規制権限を行使しなかったとして国の違法性を認め,3地裁ともに国の予見可能性を認めた。東京電力に対しては,中間指針等ⅰを上回る精神損害の増額を求めるものとなった。本論考は,国家賠償を中心にこれらの争点を整理し,原子力損害賠償制度や安全規制へ及ぼす影響を検討するものである。