著者
稲垣 照美 志賀 寛史 遠藤 広樹
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.472-479, 2009-11-20

本研究では,都市温暖化防止技術の一つとして,建築構造物表面に入射する太陽光を高反射することで内部への蓄熱を抑制できる遮熱塗料に着目した.ここでは,建築構造物の高機能化を目指すとともに,実計測により近赤外域,遠赤外域,そして太陽光における遮熱塗料の遮熱効果を検証した.<br>太陽光による実験では,日射の強い時間帯の太陽光に含まれる近赤外光に対する遮熱塗料の遮熱効果は大きく,日の出前・日没後の遮熱効果は小さいことを確認した.近赤外光による実験では,一般塗料(白)と遮熱塗料(白)を比較した場合,遮熱塗料の方が塗布物内部へ通過する熱流束が抑制でき,塗装面温度も低減した.遠赤外光による実験でも,ある程度の遮熱効果が存在した.すなわち,塗装面へ入射する熱流束が同等の場合,その効果は遠赤外光よりも近赤外光の方が大きいことが明らかとなった.なお,この傾向は,近赤外光・遠赤外光ともに,表面へ入射する熱放射の増大に伴い顕著になった.