- 著者
-
稲垣 照美
- 出版者
- 茨城大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
本研究は,赤外線センシングの利点を地雷探査に応用して,探査・除去作業に関わる危険を低減する技術の可能性について,数値シミュレーションとモデル実験の観点から探査に付随するメカニズム,探査限界,および探査に付随する影響・因子などについて総合的に検討を加えたものである.その結果,以下のことが明らかになった.なお,数値シミュレーションは,実際に取得した自然環境条件に基づいている.・提案した物理モデルは,従来の金属探知機などで探査しにくいプラスチック製地雷を想定しているが,実際の地雷探査を実施する上で有効であることを一連の数値シミュレーションから明らかにした.・太陽放射や自然環境条件を援用した赤外線センシングによる地雷探査では,地表面放射率や日照時間帯などにより探査に最適な条件が存在する.すなわち,太陽光エネルギーを最も受け易い時間帯及び日没後に熱エネルギーの方向が変化する時間帯が最も赤外線探査に適している.・赤外線センシングによる地雷探査では,地雷が地中深くに埋設されているほど難しくなる.すなわち,太陽放射や自然環境条件に基づいた探査を実施する場合,砂漠における赤外線探査の限界埋設深度は,地雷構成物質・物性などに依存するものの,100mm以下である.・地中に地雷が埋設されていない箇所でも,地中に大小の木片・石片などの混在物が存在したり,地中に水分含有率の差異が存在したり,地表面の放射率が周辺より特異であったりした場合,赤外線探査が困難になる場合がある.本手法のデメリットは,放射率が種々に変化している地表面や周辺土壌中に様々な混入物が存在する場合に探査が難しくなることである.また,ジャングル地帯の地雷探査などでは,地表付近に生育した草木などが障害物となる.これに対して放射率を特定し易い砂漠地帯では,赤外線地雷探査が比較的容易であろう.