著者
二宮 泰造 島田 武彦 遠藤 朋子 野中 圭介 大村 三男 藤井 浩
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.127-133, 2015 (Released:2015-09-10)

生産者や育成者権の保護に向けてカンキツの品種識別技術の確立が求められている。信頼度の高い科学的手法であるDNAマーカーによる品種識別技術の開発は,正確なカンキツの品種識別のために必須である。そこで,簡易な方法での品種識別が可能なCAPSマーカーによるカンキツの品種識別技術の確立をめざした。その結果,9種類のCAPSマーカーを33品種・系統に適用した遺伝子型を整理したCAPS遺伝子型データが得られた。このデータは,国内のカンキツの品種識別のための基盤的な情報となる。また,CAPS遺伝子型データから,最少マーカーセットを検出した結果,8種類のCAPSマーカーで33品種・系統のすべてを識別できることが判明した。さらに,遺伝子型データを利用して7種類の育成品種について,親子鑑定を行った。その結果,‘甘平’の花粉親は‘不知火’ではないことが明らかとなった。さらに解析を進めたところ,‘甘平’の花粉親はポンカンであることが強く推察された。
著者
太田 智 遠藤 朋子 島田 武彦 藤井 浩 清水 徳朗 國賀 武 吉岡 照高 根角 博久 吉田 俊雄 大村 三男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.295-307, 2011
被引用文献数
9

カンキツトリステザウイルス(CTV)は,カンキツに重大な被害を引き起こす重要病害の一つである.カンキツ属との交雑が可能であるカラタチ[<i>Poncirus trifoliata</i>(L.)Raf.]は,広範な CTV の系統に対して抵抗性を示す.これまでに,カラタチの CTV 抵抗性をカンキツ属に導入するために育種計画が実行され,中間母本が育成されたことで,経済品種の作出に道が開かれてきた.本研究では,マーカー選抜により効率的に CTV 抵抗性をカンキツ属に導入できるように,CTV 抵抗性に連鎖した 4 つの DNA 選抜マーカーおよび各連鎖群上のカラタチの対立遺伝子を識別する 46 のマーカーを開発した.CTV 抵抗性連鎖マーカー 4 つのうち,1 つは共優性マーカーである Single Nucleotide Polymorphism マーカーで,3 つは優性マーカーの Sequence Tagged Site マーカーであった.これら全てのマーカーで,2.8%の例外を除き,後代における CTV 抵抗性・感受性とマーカーの有無とが一致した.さらに,これらのマーカーは高度にカラタチ特異的であり,検定したカンキツ属 35 の全品種・系統に対して適応可能であった.カラタチ由来の対立遺伝子を排除するための判別マーカーでは,46 のうち 9 マーカーが CTV 抵抗性の座乗する第 2 連鎖群に位置した.また,他の 31 マーカーを残りの 8 連鎖群におくことができた.これらのマーカーは,カンキツ属 35 品種・系統のうち少なくとも 1 つ以上の品種・系統に対し,カラタチ由来の対立遺伝子を識別することができた.本研究で開発されたプライマーセットは,戻し交雑により CTV 抵抗性を様々なカンキツ属系統に導入するためのマーカー選抜に利用可能と考えられた.<br>