- 著者
-
戸島 洋一
服部 万里子
坂本 拓也
松田 俊之
熊澤 美紀子
遠藤 洋子
山本 武史
- 出版者
- 一般社団法人 日本環境感染学会
- 雑誌
- 日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.3, pp.161-166, 2011 (Released:2011-08-05)
- 参考文献数
- 8
アンチバイオグラム(抗菌薬感性率一覧表)は各施設や地域で分離される病原細菌の抗菌薬感受性を累積して示したレポートであり,感染症のエンピリック治療を開始する際の重要な情報源である.通常一定期間に院内で分離された菌はまとめて集計されるが,菌種によっては診療科や検体種類によって感受性に大きな違いが存在する可能性がある.今回われわれは,分離数が多く,耐性菌が治療上問題となりやすい緑膿菌について,診療科間,検体種類間,外来・入院間での13種類の抗菌薬の感性率の差について検討した.2009年に分離された緑膿菌株数(1人1株)は369株(外来患者から83株,入院患者から286株)で,30株以上検出された診療科は5科であった.5診療科間で抗菌薬の感性率に有意な差が認められた抗菌薬は3剤であったが,4つの検体種類間(呼吸器・泌尿器・消化器・膿浸出液)では13種類中11の抗菌薬で有意な差が認められた.呼吸器検体,膿浸出液検体の感性率が高く,泌尿器検体,便検体の感性率が低かった.外来・入院間ではすべての抗菌薬の感性率が入院由来株で低かった.尿路由来検体と呼吸器由来検体の緑膿菌の感性率の違いは大きいため,治療に当たる際は検体種類別に層別化されたアンチバイオグラムが有用であると考えられた.また診療科間の感性率の差は主に検体種類の差によるものであり,診療科別アンチバイオグラムの必要性は低いと考えられた.