著者
安藤 秀俊 遠谷 健一 盛島 日紗子
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1-2, pp.10-21, 2012 (Released:2019-09-28)
参考文献数
23
被引用文献数
1

平成20年3月に告示された学習指導要領では,持続可能な循環型社会の構築をめざして,環境やエネルギー教育のいっそうの充実が盛り込まれた.中学校理科においても,バイオマスなどの新しいエネルギーへ興味や関心を持たせ,多面的・総合的にエネルギーを捉えることが目標とされている.しかし,現行の教科書では,単にバイオマスの言葉の説明や工場の写真等の掲載にとどまり,バイオマスエネルギーに関する観察や実験の記載はなく,これらの教材開発もほとんど行われていない.そこで,サトウキビ(Saccharum officinarum L.)を材料に中学校で実施可能なバイオマスを利用したエネルギーに関する教材の開発と,その有効性を本学附属中学校で授業実践を行い検討した.サトウキビをドライイースト,サプリメント,酵母ビーズを用いて発酵させ,発生したエタノールを,ここ1,2年で急速に普及しつつあるアルコール測定器を用いて測定したところ,生徒たちは酵母の種類により0.66~0.73mg/lのエタノールを検出することができた.また,授業の前後で行った意識調査の結果,「トウモロコシから車の燃料を作ることは環境にやさしい」や「バイオマスエネルギーについて学習することは,エネルギー問題の解決に役立つ」の2項目で授業後の意識が有意に向上し,身の回りの環境やバイオマスなどを身近な問題として捉え,環境やエネルギーに関する認識を深めることができ,本教材がバイオマスを利用したエネルギーに関する教材として有効であることが確かめられた.