著者
邉 英治
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究年度第4年目にあたる今年度は、本研究プロジェクトのとりまとめに向けて、追加的な一次史料および二次資料の収集を進めるとともにデータ分析を行い、それらをもとにして論文化及び著作化を進めた。一次史料の収集と関わっては、イギリス・エディンバラのRBSアーカイブに出張し、金融エリートとして日本の銀行業の近代化に多大な影響を与えたアレクサンダー・シャンドが、晩年に(執行)役員を務めたパース銀行の各種委員会の日誌を中心に収集した。そして、総支配人から異例の昇格を果たしたシャンドをはじめとする執行役員陣が、どのように健全性を確保しつつ、日々の産業金融業務を遂行していたか、検討を進めた。二次資料の収集と関わっては、財閥系銀行及び有力地方銀行の役員を務めた金融エリートの自伝・伝記類を中心に国立国会図書館などで収集し、日本の銀行業の近代化にどのような影響を及ぼしていたか、検討した。例えば、横浜銀行の伊原隆は、公共部門の金融と産業金融とのバランスをとることで、健全性と収益性の両立を図っていたことが明らかとなった。なお、これらの研究成果の一部は、共著書に採録される予定である。国際比較の観点からは、金融エリートの役割の日本的特徴を明らかにするため、スウェーデン金融史を専門とされるウプサラ大学のヴェンシュラーク博士と打合せを行い、スウェーデンの金融エリートとの比較分析を進めた。なお、本研究成果の一部は、国際ジャーナル(Social Science Japan Journal)に投稿済みであり、査読の結果を待っている状況である。