著者
鄭 一止 辻原 万規彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.569-576, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
19

郊外に立地する社宅街の場合、当企業が撤退すると同時に衰退するか、または住宅地として変容するのが一般的であり、これらを例にした関連研究は多く行われている。一方、熊本市健軍エリアにつくられた三菱重工業熊本航空機製作所の社宅街は、戦後すぐとも寮の跡地に店舗が立ち並ぶなど、店舗が集積する大きな商店街として成長した。工場の跡地には陸上自衛隊が駐屯し、近くに県庁も移転し、新しい需要も生まれたこともあり、1960年代から70年代にかけて商店街はピークとして繁盛した。本論文は、社宅街の形成史をまとめるとともに既存の都市基盤施設をもとに、健軍エリアが熊本市東部の中心地としてどのように成長したのかについて、土地利用の変遷に着目し、以下の点で明らかにした。 (1) 近代都市計画的な要素が多く反映された熊航と社宅街のまちづくり史をまとめた。(2) 戦時中に建設された都市基盤施設との関連に着目して、健軍エリアの戦後の変容過程をまとめた。(3) 戦後の社宅街を対象に、建物用途と街区の変遷を詳細に分析した。