著者
雁丸 新一 鄭 仁豪
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.77-89, 2021-03-31 (Released:2021-09-30)
参考文献数
70

本研究では、我が国の聴覚障害教育におけるコミュニケーション手段の全国調査と手話の活用に関する研究を概観し、手話の活用に関する研究の意義と今後の課題について文献的に考察した。その結果、教育の場において手話は中学部・高等部では1990年代、幼稚部・小学部では2000年代以降活用され始め、現在では多様なコミュニケーション手段の1つとして重要な役割を果たしていることが示された。また、手話の活用に関する研究では、幼稚部や小学部の授業、教科では国語科を対象とした実践報告が多いことが明らかとなった。これらのことから、聴覚障害教育における手話の活用、特に、中学部以降のより多くの教科における手話の活用による効果や課題についての研究の蓄積の必要性が示唆された。
著者
館山 千絵 鄭 仁豪
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.339-350, 2011 (Released:2013-09-14)
参考文献数
26

本研究は、音声言語をおもなコミュニケーション手段とする聴覚障害幼児を対象に、健聴母親とのコミュニケーションと遊びを検討し、母子相互作用の発達的特徴を明らかにすることを目的とした。1歳から3歳の先天性重度聴覚障害幼児とその健聴母親26組の、母子で自由に遊ぶ場面での遊びレベルとコミュニケーション手段、機能、ターンについての分析を行った。研究の結果、聴覚障害1歳児では、物を中心とする遊びの中で、母親主導の母子相互作用が行われ、聴覚障害2歳児の遊びでは、健聴児よりやや遅れる傾向があるものの、コミュニケーションの質的変化により、1歳児とは異なる母子相互作用が行われていた。また、聴覚障害3歳児の遊びでは、健聴児と同等のレベルでの、活発な母子相互作用が行われることが示された。総じて、聴覚障害幼児は1歳から3歳にかけて、コミュニケーションが拡充され、同時に遊びの内容も深まり、母子相互作用が量的・質的に広がっていく発達的傾向が示された。