著者
笠置 智道 高見 和久 山田 明子 坂井 聡美 原 高志 酒井 勝央 安田 圭吾 今井 裕一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.336-341, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
11

症例はうつ病の36歳女性.糖尿病は未診断.入院1週間前より食事をせず飲酒のみの生活が続き,反復する嘔吐と共に意識状態が悪化し救急搬送された.糖尿病性ケトアシドーシスと診断しインスリン持続投与を開始.それに伴い血清K値は入院時の2.7 mEq/lから1.3 mEq/lまで低下したため,インスリン投与を一時中断しその間72時間で計660 mEqのKを補充した.その後血中ケトン体は減少するもアシデミアがさらに進行し,低Alb血症,低P血症を伴い複雑な酸塩基平衡異常を呈した.Stewartのphysicochemical approachにより酸塩基平衡を解析すると,強イオン性代謝性アシドーシスが主体で,原因として希釈,大量食塩水負荷,急性尿細管障害,ケトン体尿排泄の関与が示唆された.種々の電解質の欠乏を伴った酸塩基,水電解質平衡を総合的に理解するためにStewart法が有用であった.