著者
今井 裕一 岩井 久和 水谷 稔 春日井 邦夫
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.219-226, 2019 (Released:2019-05-18)
参考文献数
23

慢性便秘症で薬物治療中の血液透析患者28例を対象として, 結晶ラクツロース製剤を4週間上乗せ服薬した時の便秘に対する作用および安全性を検討した. 有効性については, 完全な自発排便回数は服薬1週から増加傾向を示し, 4週では有意な増加であった. 便の硬さは服薬1週から有意に改善し, 服薬3週および4週において作用は持続した. また便秘症の重症度については, 服薬開始前の重症度0の被験者は0例, 服薬4週では重症度0は11例と著明に増加した. また, 腎機能の指標であるBUNおよびCrは服薬により有意な低下がみられた. 安全性については, 死亡例はなく, 1例が下痢のため中止となったが, 軽症で服薬中止により回復した. 以上の成績から, 結晶ラクツロース製剤は, 慢性便秘症を有する血液透析患者に対し安全で有用である.
著者
笠置 智道 高見 和久 山田 明子 坂井 聡美 原 高志 酒井 勝央 安田 圭吾 今井 裕一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.336-341, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
11

症例はうつ病の36歳女性.糖尿病は未診断.入院1週間前より食事をせず飲酒のみの生活が続き,反復する嘔吐と共に意識状態が悪化し救急搬送された.糖尿病性ケトアシドーシスと診断しインスリン持続投与を開始.それに伴い血清K値は入院時の2.7 mEq/lから1.3 mEq/lまで低下したため,インスリン投与を一時中断しその間72時間で計660 mEqのKを補充した.その後血中ケトン体は減少するもアシデミアがさらに進行し,低Alb血症,低P血症を伴い複雑な酸塩基平衡異常を呈した.Stewartのphysicochemical approachにより酸塩基平衡を解析すると,強イオン性代謝性アシドーシスが主体で,原因として希釈,大量食塩水負荷,急性尿細管障害,ケトン体尿排泄の関与が示唆された.種々の電解質の欠乏を伴った酸塩基,水電解質平衡を総合的に理解するためにStewart法が有用であった.
著者
露木 基勝 大儀 和彦 今井 裕一郎 青木 久美子 山本 一彦 桐田 忠昭
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.430-434, 2007-07-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
31
被引用文献数
1

An odontoma is an odontogenic, tumor composed of enamel, dentine, and cementum, commonly less than 30 mm in diameter. We describe a large compound odontoma arising in the left anterior region of the mandible.A 16-year-old boy was referred by an orthopedist to our hospital for evaluation of a radiopaque lesion in the left side of the mandible. Clinical examination revealed a bony-hard swelling in the left anterior region of the mandible at presentation. The left mandibular canine and lateral incisor were not erupted. Radiographic and CT examinations showed a large, circumscribed, radiopaque lesion, measuring 30×40×28mm and surrounded by a thin radiolucent area accompanied by two impacted teeth. There were many small tooth-like structures within the lesion. The clinical diagnosis was odontoma. The tumor and the impacted teeth were surgically removed by an intraoral approach under general anesthesia. The tumor was covered by a thin capsule and consisted of 321 small tooth-like structures. The histopathological diagnosis was a compound odontoma. The clinical course has been uneventful for 4 years 3 months after surgery.
著者
西川 嘉広 水谷 英夫 小出 哲朗 石川 久高 今井 裕一 大村 崇 山田 典一 大久保 節也 市川 毅彦 伊藤 正明
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.732-735, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
8

症例は60代,男性。初回来院時,診察中に心房細動から心室細動となりアミオダロン塩酸塩注を投与された。その後,心室細動はコントロールされ無事退院した。その際,予防的にアミオダロン塩酸塩錠が継続処方された。1カ月後,心房細動にて救急受診し,初回入院時に潜在性WPW症候群の可能性が疑われ,心室細動への移行が懸念されたことからアミオダロン塩酸塩注が静脈内に投与された。その10分後,アナフィラキシーショックを呈した。加療にて回復後,アレルゲンの検索が行われた。アミオダロン製剤には錠剤と注射剤がある。すでにアミオダロン塩酸塩錠を内服していたことから注射製剤の添加剤に着目し,皮膚反応試験を実施した結果,アレルゲンはベンジルアルコールと判明した。本添加剤は多岐にわたり含有されているため,新規投薬時には医療用医薬品だけでなく一般用医薬品にも含有されていないことを確認するなど細心の注意を払う必要があると考えられた。
著者
桐田 忠昭 山川 延宏 上田 順宏 柳生 貴裕 上山 善弘 今田 光彦 今井 裕一郎
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.41-48, 2015-09-15 (Released:2015-10-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1

われわれは,腫瘍切除後の下顎再建法の選択について,1997年1月から2012年12月までの症例と特に下顎区域切除後に腓骨皮弁で再建した症例については,1987年7月から2012年12月までの症例について検討を行った。われわれの下顎切除後の下顎再建についての再建方針は,以下の通りである。1.腫瘍の進展が軟組織進展が主で下顎骨欠損が骨高径の1/4~1/3未満で残存骨高径が少なくとも15mm以上と予想される場合は,歯槽骨再建,軟組織再建ともになし,もしくは軟組織再建のみ。2.欠損が下顎骨高径1/3以上1/2未満または残存骨高径が10mm以上15mm未満と予想される場合は,(半側)腓骨または半側橈骨付き前腕皮弁による歯槽骨再建と軟組織再建。3.欠損が1/2以上または残存骨高径が10mm未満または区域切除となる場合は,腓骨皮弁による歯槽骨再建と軟組織再建を行う。症例数は,それぞれ77症例および47症例についてであり,腫瘍切除後の下顎再建におけるわれわれの再建方針と再建法の選択について,その妥当性を検討した。
著者
上田 順宏 今井 裕一郎 後藤 安宣 青木 久美子 山川 延宏 井上 聡己 山本 一彦 川口 昌彦 桐田 忠昭
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.37-44, 2014-06-15 (Released:2014-07-25)
参考文献数
28

本研究の目的は,術後の消化管運動と栄養状態に対する大建中湯(DKT)の効果について検討することである。2008年3月から2013年5月の間に,進行口腔癌の切除後に生じる欠損部に対して遊離組織移植による即時再建術を施行した40例を対象とした。20例には術翌日からDKT 15g/dを投与した。他の20例はDKTを投与しない対照群とした。消化管機能として腸蠕動音,排ガスおよび排便の確認時期,経腸栄養(EN)の開始時期,術後2週の体重減少量および体重減少率について後向きに検討した。その結果,腸蠕動音(p<0.001),排ガス(p<0.005),ENの開始(p<0.01),排便(p<0.005)はDKT投与群で早期に確認された。また,術後2週の体重変化量(p<0.05),体重変化率(p<0.05)ともDKT投与群で有意に抑えられていた。術前化学放射線療法や手術侵襲は,これらの指標に影響を及ぼさなかった。以上の結果より,DKTは進行口腔癌患者における遊離組織移植による再建術後の消化管機能の改善と体重の維持に有用であることが示唆された。