著者
松尾 和枝 喜多 悦子 酒井 康江 佐藤 珠美 小林 益江
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

昨年の調査で得られた『雪の季節の出産が大変である』この住民の声を踏まえて、雪の季節の出産を避ける。また出産時、救急車で運ばれなければならない状況を早期に発見し、対処方法を検討する。この2つの目的のために、「予防と早期発見」が必要であることを住民達自身が気づくように、健康学習会と意見交換会を行った。女性集団、男性集団をそれぞれに集めて、日本から持参したマギーエプロンを用いて、出血や分娩の経過に異状をもたらす妊娠中の母体の状態を視覚的に示した。その体内で起きている異常を視覚的に理解すると、住民達は、早期発見の必要性と検診の必要性を理解することができた。現地ナース、助産師が健診受診による早期発見対処の可能性について補足説明をした。助産師は、パクリット村の方言を加えたペルペル語でアズロのマタニティ病院での制度、システム、経費について説明を加えた。最初は、雪の季節を避けた計画妊娠について、神のみが知ることと、全く聞く耳を持たなかった年配の女性達も、助産師の説明で理解をした。また、男性たちも雪の季節に妻や子を救急車で搬送をすることの負担や、その結果、娘を失った辛く悲しい経験を共有し、今回の健康教育内容を家族や地域に広めていくことを約束した。今回の健康学習会は、バクリット村住民の約20数名に伝えたに過ぎない。村の住民に妊娠出産についての正しい情報提供と、その正しい知識に基づく適切な保健行動の形成については、今後も継続的な啓蒙普及活動が必要であると考える。今後は、B村のナースとデレゲションの助産師と継続的な連携を持ちながら、活動の定着、妊婦・乳幼児死亡ゼロの村を目指した住民の意識・行動の変容やスタッフの活動の評価も行って行きたい。今回の調査活動並びに健康学習会の一連の過程を、現地看護職に紹介し事例検討を行なった。彼らは、病院で患者を待っていたことを反省し、医療職が現地に出向いて地域の問題に気づき、住民と共に健康問題の改善に努力するアウトリーチの活動の必要性に気付いた。